京セラコミュニケーションシステムは2019年2月20日、LPWA(Low Power Wide Area)ネットワークである「Sigfox」をテーマとしたプライベートイベント「KCCS IoT Conference 2019」を開催し、Sigfoxの現状と今後の方向性を紹介した。
京セラ子会社の京セラコミュニケーションシステム(以下、KCCS)は2019年2月20日、LPWA(Low Power Wide Area)ネットワーク(以下、LPWA)である「Sigfox」をテーマとしたプライベートイベント「KCCS IoT Conference 2019」を開催し、Sigfoxの現状と今後の方向性を紹介した。
KCCSは2017年からSigfoxを展開する国内唯一の通信事業者だ。Sigfoxを含むLPWAはその名が示す通り、キロメートルレベルの広域ネットワークを低消費電力で提供する通信方式となる。トレードオフとなる通信速度は低いが低消費電力である特徴を生かし、電力供給に恵まれない環境に設置され、通信帯域をあまり必要としないIoT(モノのインターネット)機器の通信手段として採用が始まっている。
同社社長の黒瀬善仁氏は、ここ1年間のLPWAを巡る情勢について「(LPWAで有力規格とみられているNB-IoTやLoRaWANと比較しても)Sigfoxは盛り返してきたのではないか。一方で、LPWA全体でみるとPoC(概念実証)を地道に積み重ねている段階」と語る。
その理由の1つは、NB-IoTの普及にトーンダウンがみられるためだ。米中摩擦の勃発によりNB-IoTの推進役だった中国企業の動きが鈍くなっており、黒瀬氏は「政治的な動きでNB-IoTの動きが止まるのはなんだかとも思うが、話を聞いているとどうもそのようだ」と事情を語る。
また、黒瀬氏は日本におけるSigfoxも堅実に成長していることをアピールする。「過去にさんざんネットワークのカバーが弱いといわれてきた」(同氏)とが、2019年2月時点での人口カバー率が94%に達したと紹介。同年夏には97%への拡充を予定する。また、Sigfoxのデバイスやアプリケーション、またはインテグレーションサービスを提供するパートナーが累計425社となったことも同時に発表された。
その他、2019年1月から屋内に設置できる小型基地局「Access Station Micro」のレンタルを開始したことや、Sigfoxを用いた測位技術「Atlas Native」などの紹介があった。
続けて、フランスSigfoxでSenior Vice Presidentを務めるBertrand Ramé氏がグローバルにおけるSigfox最新状況を説明した。
Sigfoxを提供する国や地域は着実に増加しており、2019年には70カ国に達する見込み。「G7とG20に入る国々のほとんどをカバーしており、世界のGDPの90%をカバーする」(Ramé氏)と、Sigfoxネットワークが広がりつつあることをアピールする。今後の通信網拡大についても、地上基地局の整備と並行して通信衛星を準備していることを明らかにした。
Sigfoxネットワークに接続するデバイス数、デバイスが送受信するメッセージ数もともに堅調な伸びを見せており、2018年12月時点でデバイス数は600万個、メッセージ数は毎月約3億5000万件に到達する。Ramé氏は「Sigfoxは種まき期間からテイクオフしたといっていいだろう」と事業展開の進捗に自信をみせる。
現在、Sigfoxのアプリケーションとしては、物流現場におけるアセットトラッキング、公共インフラや装置などの状態監視、他のネットワークのバックアップ手段が一般的という。また、その他特徴的な採用事例として、米国ホテルチェーンの従業員用パニックボタンや、米国の有名テーマパークに設置されたごみ箱の残量監視ソリューションを紹介した。
今後、Sigfoxは低コストなアセットトラッキングの実現に注力する方針だ。Ramé氏は「現在、パートナーには10米ドルでトラッキングデバイスを提供してもらい、コンテナやラックなど物流現場で用いられている。そしていま開発中のデバイスは5米ドルのコストを予定しており、これにより荷物の取扱量も増えるだろう。1米ドルまでデバイスをコストダウンできれば、世界中の小包にデバイスを装着できるだろう」とSigfoxの目指す姿を語った。
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