製品を作っているメーカー自体が供給する保守部品は、純正部品と呼ばれている。そしてほとんどの場合、純正部品は高価であるというイメージが持たれている。なぜならば保守部品ビジネスは昔から高収益ビジネスであったため、この保守部品の領域で廉価な海賊版部品を売る業態が既に一部の部品分野では長く一般化しているためである。
特に昨今では、純正部品の部品番号からインターネットを用いて適応する海賊版部品の情報を調べるだけでなく、そのまま通信販売サイトで購入できるようにもなっている。以前にも増して部品需要が海賊版部品に流れやすくなっている訳だ。また、同等の他社製品純正部品に関する価格情報も調べることが可能である。
したがって、例えば製品の稼働上必要な消耗部品の価格から将来的な製品の保有コストを容易に算出することもできるわけで、これが製品選定の上での大きな要素にもなっている。ことほど純正部品の価格設定は非常に重要になりつつあるわけである。魅力的な価格を設定することによって、製品そのものの選定をしてもらい、かつ海賊版部品に流れる顧客を捉えることが出来ればより企業収益を向上できることは明白である。
では、なぜ今まで純正部品は結果的に海賊版部品に流れてしまうような部品価格に設定されてしまっていたのであろうか? 理由は、保守部品の管理点数が多く顧客の琴線をくすぐるような魅力的な価格設定ができる工数の確保が難しかったからだ。それゆえ、原価の上にマージンを乗せるだけの原価積上げ方式の単純な価格設定しかできなかった。
さらに、価格は基本となる価格を参照して製品の展開地域に即した地域価格の設定や商流の中の卸値も設定しなければならないし、地域や商流の中における移転価格まで設定する必要がある。本来であれば、それら全てにわたり設定価格におけるマージン分析をし、価格の最適化を実施した上で価格表への記載をしなければならない。しかし、そこまで確実に実施するには膨大な工数が必要である。
魅力的な価格設定は、保守部品ビジネス従事者とって前述の需要予測と在庫配置の課題を片付ける間もなく降ってきた、新たな頭痛の種になりつつあるといえるかもしれない。
以上3点を課題として挙げたが、これらの課題を課題たらしめている真の課題が別のところにあると筆者は強く確信している。それを次に日本とグローバルでのアフターマーケット業務に対する取り組みの違いとしてご説明したいと思う。
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