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» 2019年02月06日 10時00分 公開

欧米から遅れる日本製造業のアフタービジネス、山積する課題を照らすいまさら聞けない「アフター市場収益化」入門(2)(3/4 ページ)

[落合克人/シンクロン・ジャパン,MONOist]

日本のアフターマーケット、グローバルでのアフターマーケット

 日本とグローバルでのアフターマーケット業務に対する取り組みの最も大きな違いは、合理化を前提としたシステム活用の心構えと特に海外子会社に対する企業統治の徹底度合いではないかと思っている。これはアフターマーケットに限った話ではないが、日本企業は一般的にITシステムを効果的に使用した業務の効率化が欧米企業に比べて著しく遅れているところがある。

 前時代的な業務プロセスを大きく変えることなく、部分的にシステムを当てはめて業務を一部改善するにとどまるケースは枚挙にいとまがない。また、文化的、言語的に日本の本社から海外拠点に業務指示を徹底できず、本社と海外拠点子会社とで同じ業務を別のシステム、別のやり方で対応しているという話も良く耳目に触れるところである。

 前回記事にも述べているが、日本のアフターマーケットは社内において投資や業務改革の的となることもなく、一般的に特に関心を持たれない事業になっているようだ。それゆえに、企業内の資本投資順位もかなり低い場所に位置し続けており、業務プロセスの見直しやシステム化もほとんど進んでいない状況にある。

日本のアフターマーケット

 一部の超大企業においては自社内でシステムを構築して需要予測、在庫配置計画、価格設定をしているケースは散見されるが、それは日本の製造業全体を俯瞰した時の氷山の一角でしかない。また、それらのケースにおいても日本国内のビジネスのみを想定して作られたシステムであるがゆえに、事業のグローバル展開に際して拡張が困難であったり、改修に多大な工数がかかると試算されたりもしているようである。

 それゆえに、国内外のシステムの統合も業務プロセスの見直しも先送りにされ続けているようである。そもそもの国内システムも勘と経験と度胸をもって専任の担当者のみが利用可能なものとなっており、例えば需要予測等々の業務も先端的な数学的統計分析手法を用いたものとは全く隔たりがある例も見受けられる。

 また、担当者の高齢化により業務上の暗黙知を若い世代に形式知化して引き継ぐことがなかなかできないという、社内での業務継承に多くの苦労が発生しているという話もよく聞くところである。

 アフターマーケットに限らず、上手にシステムを利用してより洗練されたプロセスを少ない人材で回しより大きな効果を目指そうとしないことが、今後労働人口が急速に減少していく中で日本の製造業における看過できない大きな課題だと思われる。さらに、人口減少に応じて国内需要が減少していく中で効率的に海外子会社を企業統治して経営をグローバルシフトすることをそろそろ真剣に考えなければならない。

グローバルでのアフターマーケット

 実は一部の先進的な企業を除き、10年前の欧米でもアフターマーケットの具体的業務内容は現在の日本と似たような状況であった。しかしながら、現在の欧米ではアフターマーケットは最も力を入れるべき事業分野の1つとして認識と業務遂行方法が大きく変わってきている。

 理由は上述した通り、アフターマーケットが高収益で不況に強く顧客満足度を大きく左右し、今後の企業のあり方の大きなヒントを得られる事業分野であることが、それぞれの企業の経営層に理解されてきているからなのである。

 それを決定づけたのが2008年の米国発の不況の発生であった。不況が訪れた際、多くの企業は色々な施策を講じながらその大波が過ぎるのを待っていた訳であるが、その中で大きく企業収益を確保していたのがアフターマーケット事業だったことが事後の分析の結果見えてきた。

 さらに踏み込んでアフターマーケットの業務分析まで実施した結果、製品系ビジネス領域ほどシステム投資が進んでおらず、その業務プロセスには多くの人間系のプロセスが介在しており、主力である製品系ビジネスほどシステム的にもプロセス的にも洗練されたものになっていないことが判明した。

 そこで彼らはこの分野をシステム化してより合理化した業務プロセスに革新すれば、さらに高収益で不況に強い企業体質を作ることができるのではないかということを考えた訳である。したがって下図のように、従来は売上同様に対製品比率で小さかったIT投資比率を高める方向に舵を切り始めている。

製品とアフターサービスの売上、利益、IT投資額の比較(クリックで拡大) 出典:Syncron Japan

 現在では、過去の部品販売実績を数学的に分析して将来需要を予測し、自社の複数倉庫における部品配置計画を立案する。さらには商流の先にある独立系販社代理店の部品の在庫補充までもメーカー主導で実施し、末端での部品即納率を向上させながら部品サプライチェーンを減量化するキャッシュフロー経営に取り組んでいる事例も当たり前となった。IoT(モノのインターネット)を活用して予知保全に積極的に取り組むケースも増えている。

 いつ需要があるかわからない部品を在庫するのではなく、需要が発生した際に、3Dプリンタを活用して必要部品を制作するという手法も取られ始めた。この3Dプリンタも需要地に設置しておいて、そもそも供給そのものの時間を省くことも模索されている。

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