曙ブレーキ工業は2019年1月30日、私的整理の一種である事業再生ADR手続の正式申込とその受理について発表した。
曙ブレーキ工業は2019年1月30日、私的整理の一種である事業再生ADR(Alternative Dispute Resolution:裁判外紛争解決手続)手続の正式申込とその受理について発表した。会社更生法や民事再生法などの法的手続ではない、産業競争力強化法に基づく事業再生ADR手続を活用することにより、顧客や取引先などとの取引に影響のない形で、金融機関との合意のもと今後の再成長に向けた強固な収益体質の確立と財務体質の抜本的な改善を目指すとしている。
同社グループが同年1月29日に事業再生実務家協会に対して行った事業再生ADR手続の申請は同日付で受理された。さらに同日付で事業再生実務家協会との連名により、全ての取引金融機関などに対して一時停止の通知書を送付した。なお、事業再生ADR手続の申込については、主要取引金融機関と協議のもとで行っており、資金繰りについても、現時点で問題は生じていない。万が一の事態に備えた主要取引金融機関によるDIPファイナンスなどの資金繰り支援も準備しているという。
今後曙ブレーキ工業は、2019年2月12日開催予定の第1回債権者会議において、全ての取引金融機関に対し、事業再生計画案の概要説明と、先述した一時停止の通知にかかる同意(追認)などを取り付けたい考え。その後事業再生ADR手続の中で、全ての取引金融機関と協議を進めながら、事業再生実務家協会による調査、指導、助言を受けて事業再生計画案の策定を進める。同計画案については、第1回債権者会議で定められたスケジュールに従い、全ての取引金融機関の合意による成立を目指すとしている。
曙ブレーキ工業は、ブレーキシステムを主力製品とする大手自動車部品メーカーだ。これまで、2018年度を最終年度とする中期経営計画「akebono New Frontier 30 - 2016」を進めており、北米事業の立て直し、製品別事業部制への移行によるグローバルネットワークの確立、ハイパフォーマンスブレーキビジネスの拡大、欧州事業の新築などに取り組んでいた。
中計の中で最大の課題になっているのが北米事業の立て直しだ。2014年度から発生した生産混乱による業績悪化に対処すべく「組織・管理体制の抜本的な改革」「生産性の改善」「生産能力の増強」「収支構造の改革」に取り組んでいた。実際に、2017年度の北米事業の営業利益は、2016年度から約48億円改善して15億円の黒字に反転させている。しかし「一部のお客さまによるセダン系車種生産からの撤退や、生産混乱に起因して次期モデルの受注を逃したことなどにより、今後、数年間は売上高が減少する見通し」(同社)ともしていた。
この北米事業の立て直しが進んでいないことにより「当社グループの経営環境及び財務体質は依然として厳しい状況」(同社)と判断し、今回の事業再生ADR手続の申請に至った。
なお、1月30日に一部報道のあった「トヨタ自動車による増資引き受けなどの支援の打診」については「当社として発表したものでは無く、またそのような事実はない」と否定する声明を発表している。
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