小型ロケットの分野では、引き続き、インターステラテクノロジズ(IST)の動向が気になるところだ。同社は2018年6月、観測ロケット「MOMO」2号機を打ち上げたものの、点火の数秒後にエンジンが停止、機体はそのまま地上に落下・炎上し、目標としていた高度100kmへの到達はならなかった。
原因を調査したところ、2号機で追加した姿勢制御スラスターで問題が起きた可能性が高いことが分かった。設計温度を大幅に上回る温度で燃焼し、配管が焼損。漏れ出した高温ガスがバルブ駆動用のエアチューブを焼き、燃料の供給が止まり、推力を失った模様だ。同社のWebサイトで報告書が掲載されているので、詳しくはそちらを参照して欲しい※)。
⇒観測ロケット「MOMO」2号機打上げ実験報告書(第1報)の公開
⇒観測ロケット「MOMO」2号機打上げ実験報告書(第2報)の公開
MOMO2号機の打ち上げ前に地上燃焼試験は行っていたものの、配管の形態が実機と違っていたため、この現象が表面化せず、問題に気付くことができなかった。そこで同社は、設計に対策を施した後、MOMO3号機では、CFT(Captive Firing Test)と呼ばれる、実機形態による燃焼試験を実施することを決定した。
実機を使うことで、打ち上げ本番の前に、潜在的なリスクを全て洗い出すことが目的。より確実に打ち上げるためには、もちろんCFTはやらないよりやった方が良いのだが、毎回これをやっていては、開発コストが上がり、開発期間も長くなる。ベンチャーとしては省略するという選択肢も当然あるわけで、前回はそれが裏目に出てしまった形だ。
CFTの1回目は、2018年末に実施。このときは点火状態の確認が目的だったため、燃焼時間は2秒だけだったが、1月12日には、実際のフライトと同じ120秒の燃焼にも成功した。地上に固定しているため、機体に掛かる加速度の影響までは再現できていないものの、初の宇宙到達に向け、大きく前進したといえるだろう。
CFTは2月以降に、再度実施する予定。前回は地上からコントロールしていたが、次回は実機と同じアビオニクスを搭載し、より本番に近いコンフィギュレーションで120秒の燃焼を行うという。MOMO3号機の打ち上げ時期はまだ発表されていないが、日本初の民間宇宙ロケットが実現するか、注目していきたいところだ。
同社は軌道投入ロケット「ZERO」の開発も並行して進めており、2019年はこちらの進捗もあるだろう。ZEROでは、MOMOの5倍となる推力6トンのエンジンを新開発。これを第1段に9基、第2段に1基搭載することで、重さ100kgの衛星を高度500kmの地球低軌道に打ち上げることが可能になるという。打ち上げコストは6億円以下を目指す。
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