「レベル3のシェアは2030年から横ばい」という市場予測を反映してか、2019年のCESでは無人運転車に関する展示が多くみられた。ドライバーが運転に復帰する必要のあるレベル3の自動運転と、システムが全ての動的運転タスクを担うレベル4〜5。それぞれについて、2019年は法的な議論や技術の熟成が一層進みそうだ。
「自動車業界はレベル3の自動運転に対してどちらかというと懐疑的だ。レベル3で認められているのはハンズオフだけだが、ステアリングから手を離すということは、視線や意識も運転から離れるということにつながり、いざというときに運転を人に戻すのが難しくなる。そのため、レベル4〜5の自動運転に開発が移行するのが早まっている」
2018年12月に開いた記者説明会でそう語ったのは、Armでオートモーティブソリューション&プラットフォームディレクターを務めるロバート・デイ(Robert Day)氏だ。
レベル3の自動運転について、米国自動車技術会(SAE)では、限定領域においてシステムが全ての動的運動タスクを実行するものだと定義している。何らかの要因でシステムによる自動運転の継続が困難になった場合、ドライバーはシステムの要請に応じて運転を交代しなければならない。
これに対し、日本の警察庁は道路交通法の改正試案において、レベル3の自動運転が動作条件を満たさなくなった時に直ちに適切に対処できる態勢でいるなどの場合に限り、携帯電話などを手に持って使用することやディスプレイの画像を注視することを認める項目を盛り込んだ。こうした使われ方が想定されるレベル3の自動運転車向けに、ドライバーが運転に復帰する態勢が整っているかどうかをセンシングする技術の開発が進められているものの、先述したデイ氏の言葉を覆すのは簡単ではない。
大手サプライヤーのシェフラー(Schaeffler)は、消費者向けエレクトロニクス展示会「CES 2019」(一般公開日:2019年1月8〜11日、米国ネバダ州ラスベガス)で開催したプレスカンファレンスにおいて、自動運転車の各レベルの生産台数見通しに触れた。「レベル3の自動運転の重要度が下がるわけではない」(シェフラー オートモーティブOEM部門担当CEOのマティアス・ジンク氏)とはいうものの、実質的にはレベル3の普及が伸び悩み、レベル4〜5がシェアを伸ばすという市場予測だ。
同社が紹介した市場予測では、グローバル生産台数の内、2020年はレベル2までの自動運転車が100%を占めるが、レベル3は2025年に4%、2030年に13%に拡大する。しかし、2035年は2030年と比較してトータルの生産台数は横ばいであるにもかかわらず、レベル3の自動運転車のシェアは14%にとどまる。2035年にはレベル5の自動運転車が9%、レベル4が18%にシェアを急拡大し、レベル2以下が59%まで減少する。
同じくドイツの大手サプライヤーのボッシュ(Robert Bosch)も、CES 2019のプレスカンファレンスでレベル4〜5が想定される自動運転シャトルの普及について語った。「米国や欧州、中国だけでも、早ければ2020年に約100万台のオンデマンドシャトルバスが走っているだろう。2025年には250万台に増加する。こうした車両の多くは完全自動運転の電気自動車になる」(ボッシュ北米法人 社長のマイク・マンスエッティ氏)という。
こうした予測を反映してか、CES 2019の自動車関連企業の展示では、無人運転車に関する提案が目立った。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.