シェフラーはCES 2019で、無人運転車のプラットフォームを走らせた。前後左右に滑らかに移動する電気自動車だ。このプラットフォームには、インホイールモーターとブレーキ、転舵用のアクチュエーター、サスペンションを一体化した駆動ユニットを採用している。小型軽量化や安全性の確保、自動車向けの機能安全規格ISO 26262で最も厳しい安全基準ASIL Dの達成など、かなり現実的に開発されたものだといえる。
開発にあたっては、F1などレース向けにエンジニアリングサービスを手掛けるTREと、身体が不自由な人向けにジョイスティックで運転できるように車両を改造する技術を持つベンチャー企業のパラバン(Paravan)が協力している。TREはレースの実績を基に、レース向け以外の車両も手掛ける。パラバンは技術を既に市販しており、5億km以上を無事故で走行した実績もある。
他の企業の展示では無人運転車のコンセプトカーを用い、無人運転車での過ごし方にフォーカスした提案も見られた。仕事やエンターテインメント、オンラインショッピングなどを無人運転車の車内で行う様子を各社が実演した。そうしたデモでは、「職場に向かう無人運転車で同僚と連絡をとり、途中で同僚をピックアップする」「車内で注文した買い物の荷物を帰宅する頃に配達する」「車内で有料のサービスを利用したり、オペレーターに用事を頼んだりする」といった具体的な場面設定も見られた。
大手サプライヤーはこうしたデモが単なる芝居ではなく、必要な技術開発を踏まえていることを強調した。ボッシュの説明員は「電動パワートレイン、車内の決済、メンテナンスの仕組みなど、自動運転シャトルに必要となるさまざまな技術は既にわれわれの手元か、すぐ近くにある」という。デンソーの技術者は「モビリティサービスに向けた技術は2018年のCESにも出展したが、何ができるのかが伝えきれていなかった。今回は、われわれの技術でどんなうれしさを提供できるかに焦点を当てている」と語った。
コンセプトカーはいずれも箱形の車両で、個人が保有するのではなくサービス事業者が走らせる専用車両をイメージしている。そのため、無人運転車を予約したユーザーに車内をどのように合わせるかという点に注力した展示となっていた。
これに関して、ヤマハ発動機は、画像認識技術によって予約した乗客を見分けたり、乗客全員の準備ができてから発車したりする“AI車掌”を提案した。アイシン精機はシートの技術を応用し、無人運転車を予約したユーザーの用途や乗客の構成に合わせたシートアレンジのデモを行った。子どもが乗客に含まれる場合は子どもの年齢や体格に合わせたチャイルドシートを自動で展開したり、3列目まで乗車する場合に自動で2列目のシートを移動させたりする。また、アッパーローラーを省略し、バンタイプ以外の車両にも採用可能なスライドドアも紹介した。
現代自動車(Hyundai Motor)も、ユーザーに合わせてパーソナライズすることを重要視する。CES 2019のプレスカンファレンスでは、デザインコンセプト「スタイルセットフリー」を発表した。室内を広く確保することが可能な電気自動車(EV)に向けた提案だという。
「スマートフォンの画面は一人一人違うのに、なぜクルマはパーソナライズできていないのか。用途に合わせて自由にカスタマイズし、アップグレードもできるようにすることで、一人一人に合ったカスタマーエクスペリエンスを提供する」(現代自動車 エグゼクティブバイスプレジデントのWonhong Cho氏)
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