そんなわけで、下回りから次第にシェアを高めていったArmであるが、より上位のサーバ用プロセッサを諦めた訳ではもちろんない。実際、初期の失敗にもかかわらず、引き続き上位のサーバに向けた製品をリリースし続けた。
例えば、中国のHiSiliconは2014年9月、TSMCの16nm製造プロセス「16FF」(16FF+にあらず)を利用して32コアのCortex-A57を集積したサーバ向けチップを発表している(図3)。イスラエルのEZ-Chip(2016年にMellanoxにより買収)は2015年2月、100コアのCortex-A53を搭載したTile-MX100(図4)をリリース。そして2017年11月にQualcommは、独自開発の「Falkor CPU」を48コア集積したサーバ向けCPUとして「Centiq 2400」を発表している(図5)。
Armサーバは、こうした多コア化が1つの特徴であり、それが故に(旧Tileraのインターコネクト技術を持つ)EZ-Chipとか、長らく独自でコアを開発してきたことで技術力を蓄積しているQualcommといったベンダーがArmサーバに名乗りを上げたというわけだ。しかし、さらに広範にArmサーバのマーケットを広げてゆくためには、こうした技術力の高いベンダーに任せるのではなく、コアそのものに加えてスケーラビリティの高いインターコネクトも同時にIPとして提供していく必要がある。
そこで、サーバ向けにカスタマイズしたCPU IP、それとサーバ向けのインターコネクトや周辺回路のIPを、Neoverseというブランドで投入することにしたというのは、要するにようやくArmをベースにサーバ市場に参入したいというベンダーが増えてきたことの現れ、として良いかと思う。
さてそのNeoverseであるが、構想としてはそれこそ4コアから128コアまでの広範なスケーラビリティが最大の特徴である(図6)。ローエンドはエッジ向け、ハイエンドはクラウドサービスまでがカバー範囲となる。
まず、プロセッサというかプラットフォームであるが、現在出荷中のもの(2018年11月に発表があった、Annapurna labsがAWSのために製造した「Graviton Processor」がこの代表例)が「Cosmos Platform」、そして2019年1月の「CES 2019」でHuaweiが発表した「Kunpeng 920」が「Ares Platform」となる。
これに続き、2020年には「Zeus Platform」、5nm世代では「Poseidon Platform」が控えている(図7)。それぞれのプラットフォームの具体的な構成が図8で、世代毎にどんどん大規模になっていることが見てとれる。これらのうち、Cosmos Platformに関しては、3種類のSGI(System Guidance for Infrastructure)が既に提供中であることが明らかにされている。
図9は「SGI-575」と「SGI-775」の構成をまとめたものだが、ご覧の通り4コアを1つのクラスタとし、これとシステムキャッシュ、メッシュネットワーク、周辺ロジックなどをひと塊にしたものである。ちなみに、SGIそのものはIPパッケージというよりも、名前の通り「Guidance」であって、個々のCPUなどに関してはPOPが提供されるが、図9の形で複数のCPU IPコアやキャッシュ、周辺回路をまとめたものはPOP(Processor Optimization Package)としては提供されない模様だ。
先述したGraviton Processorの場合はCortex-A72を利用しているとされており、SGI-572(Cortex-A72を最大48コア、もしくはCortex-A24を最大24コア集積するもの。インターコネクトはCCN-512を利用する)をベースとした製品となっている模様だ。
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