これらのデータから分かるように、中小企業における設備投資は緩やかな増加傾向をみせている。それでは一体どのような目的の投資が増加しているのだろうか。
中小企業白書2018によれば、設備投資の目的について、2017年度では「維持更新」と回答する企業が最も多くなっていた。さらに10年を通じて「維持更新」と回答する企業の比率が増加しているという(図12)。一方で、付加価値拡大につながると考えられる「生産(販売)能力の拡大」「製(商)品やサービスの質的向上」と回答する企業の比率や、労働投入量の効率化につながる「省力化合理化」と回答する企業の比率は、過去10年で低下傾向にある。
設備を新設してからの経過年数を示す設備年齢の推移について、中小企業と大企業の設備年齢がほぼ同水準だった1990年の設備年齢指数をそれぞれ100としてその推移を見てみる。すると、2016年度において大企業の設備年齢指数は148.6と1990年から約1.5倍となっているのに対し、中小企業の設備年齢指数は194.1と約2倍にまで増加しており、中小企業の設備が大企業の設備に比べて老朽化が進んでいることが分かる(図13)。過去10年間で投資目的を維持更新とする企業の割合が高まってきたと先に述べたが、設備の老朽化がその背景にあるものと考えられる。
これらを背景とし、直近3年間の設備投資の有無別に、直近3年間で労働生産性が向上した企業の割合を見てみると、いずれの設備投資目的で見ても、積極的に投資を実施した企業は労働生産性を向上させていることが確認できる(図14)。設備投資の目的別に、積極的投資を実施したことによる生産性向上企業比率の増加分を比較した場合、省力化投資の効果が最も高くなっている。
深刻化している人手不足に対応していく上では、省力化投資を行うことで労働投入を効率化していくことが期待されるが、実際に人手不足感と今後の省力化投資の実施意向を確認すると、人手不足を感じている企業ほど今後、省力化投資を積極的に行う意向を持っていることが見て取れる(図15)。
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