とはいえ、現在の「HomeX」でできることは、既に数多く存在するIoT家電などで示された延長線上にすぎない。例えば、ある部屋から他の部屋の家電を操作したり、シャッターを操作したりできるが、これらは同じパナソニックが提供するホームIoT「AiSEG」などでも実現できることである。
馬場氏は「HomeXは12の事業部門から人を出してもらい、共同開発した。統合されたユーザーインタフェースというのは独自で開発したが、その裏で実際に動いている機能などは従来パナソニックが各事業部で開発してきたものでもある。パナソニックの中にあるものを人間中心に再定義した形となる」と述べている。
また特徴となるのが、双方向性を実現していることである。例えば、キッチンで電子レンジを操作したら、それに応じた情報の表示や支援情報の発信などを行える。こうした行動ログなどを取得しそれをトリガーにさまざまな付加価値を提案できる点が従来のIoT家電にはない発想だともいえる。「人が自然に暮らす中で、情報の活用や生活の支援を最適に行えるような仕組みを意識した」と馬場氏は述べている。
現在実現できている機能は限定的だが、重要なのは、「HomeX」が暮らしの統合情報基盤を目指しているという点である。
今回の「HomeX」は人間中心をコンセプトに“暮らし”に焦点を当て、最適なユーザーインタフェースを実現し、そこをプラットフォーム化することをまず目指した。人にとって心地よいタッチポイントを作り、機能についてはその後、必要な機器やサービスなどと連携して追加するという仕組みである。既に20以上の家庭内機器との連携を実現しているとしているが、今後は連携機器やサービス、機能などの拡張を進める方針だとしている。
馬場氏は「スマートフォンは優れたユーザーインタフェースであるが、住宅の中で使う時にそれは最適なインタフェースとなっているのかという点については疑問がある。暮らしには暮らしに最適なユーザーインタフェースがあるはずだ。例えば、スマートフォンは常に一定の距離で使うが、HomeXディスプレイなどでは人との距離が変わる。近づいてきたタイミングで情報を発信するなど、異なる表現や発信ができるはず。暮らしの中での最適なユーザーインタフェースを実現し、暮らしの中での設備や機械とコミュニケーションを行う世界を実現したい」と述べている。
もう1つの狙いが、暮らしを総合的に包括するデータの収集である。IoT家電などを使い、機器の使用状況などを収集することはできても、家庭の機器や設備の情報を複合的に取得することは難しかった。「HomeX」では家電や住宅設備などを豊富に持つパナソニックの強みを生かし、これらのデータを複合的に収集、蓄積し、分析などを行える。それをベースとし、レコメンドなどの情報発信や自動制御などを行うことで、暮らしに新たな付加価値を生み出すことができ、新たなサービスビジネスなども展開できる。
ただ、ビジネスモデルについてはまだこれからだとしている。馬場氏は「人間中心で考えた場合、サブスクリション型などがいいのか、機能の売り切りなどがいいのか、これから実証を通じて決めていく」としている。
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