おもてなしと喜びのダンス、デリバリーサービスロボ「Relay」が目指すもの楽しい大好きスタートアップ代表が見たロボット業界(3/3 ページ)

» 2018年09月21日 08時00分 公開
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筆者が考える一番の特長は「洗練されたデザイン」

 人とのコミュニケーションが発生するタイプのロボットは、人に愛されるための要素が盛り込まれていなければならないと筆者は考えている。工場で黙々と決められた作業をこなすロボットであればその必要はないのかもしれない。

 しかしながら、人とのコミュニケーションが発生するロボットの場合は、近寄りやすい印象を持ってもらわなければならない。そうでなければコミュニケーションは始まらない。コワモテではダメなのだ。

 その点、Relayは流線形にデザインされており、人と一緒の空間に存在していても圧迫感を感じさせない。タブレット部分と本体との間には、思わず抱き着きたくなるような窪みがある。

 また、愛着感が湧くように小学校低学年の子どもぐらいの背の高さで設計されている。そして、タブレット部分にはよく見ると目のような点が付いており、顔も表現されている。ただ、顔だと認識するためには、少々時間を要したので、別の細工を施しても良いのではないかと考える。

 例えば、目、鼻、口のシールを作成し、「Relay」の前面に貼り付けるのはどうか? また、一生懸命働いている事をアピールするために、額の汗を表現したシールを貼り付けても面白いのではなかろうか。

 読者の中には、そんなの意味があるのかと感じた方もいるかもしれないが、こういった細工をいれることでロボットに対しての人の接し方が、機械から一人のキャラクターに変わる。キャラクターになることで愛着が湧き、コミュニケーションが取りやすくなり、そして活躍の場が増えていくのである。シールだけで演出できるので、ぜひ、お勧めしたい。

人よりもロボットの方が効果を生み出す仕事が必ずある

 最後に、「Relay」をはじめ、サービスロボットの活用について述べる。今回、「Relay」を導入した渋谷ストリームエクセルホテル東急はホテル業であり、接客で“おもてなし”をする事が重要な仕事の1つである。筆者がホテル業界を中心にロボット導入の営業をしていた時に必ず言われた言葉がある。

 「接客の一部をロボットに任せることは、接客を放棄することになるのではないか」という言葉だ。

 この点について、同ホテル総支配人の杉野仁美氏にも話を伺った。杉野氏は、客室への品物のデリバリーは人よりもロボットの方が適している場合があると語った。

 ホテルの客室は顧客にとってのプライベート空間であり、そこに他人が踏み入れることは好ましくない。特に、部屋着でノーメイクの女性にとっては、その状態で他人と会うことに抵抗がある。しかしながら、人ではないロボットがデリバリーすることで、この問題は解消できる。結果として、顧客へより良い“おもてなし”を提供したことになるのだ。

 このように、ロボットの方が価値を生む仕事は存在する。一方、人でなければ価値を提供できない仕事も存在する。重要なのは、導入するロボットの特性と自身の仕事内容を理解した上で、両者の区分けを適切にできるかどうかである。

 今回の導入例は、デリバリーという明確な仕事に対して、ロボットの特性を生かしたおもてなしと喜びのダンスのような人を楽しませるエンターテインメント要素を付加し、顧客へ提供する価値を向上させている。労働力不足が大きな社会問題になりつつある昨今。筆者の周りでも人がいないとの嘆きの声が多く聞こえる。だがしかし、人がいないからロボットを使うという安易な発想は危険である。

 今回の導入例のように、適材適所でロボットが活用されることを筆者は願っている。

Profile

田中 智崇(たなか ともたか)

1979年生まれ。Many合同会社代表。サラリーマンのための自由なモノ作り集団FreeeeMakers共同代表。

大手ソフト会社で、IP電話、動画配信の研究開発(大学との共同研究)や国際空港のセキュリティシステム開発、国内外の携帯電話・PHS(10機種)の開発に従事する。29歳の時に、エンジニアは技術以外のことも身につけなければならないと考え、公認会計士の勉強を始める。

30歳で、富士通グループに転職後、上場企業への連結会計システムの導入支援、及び会計コンサル(担当クライアント30社)業務に従事する。33歳で、IT系ベンチャー企業に転職し、新規事業やサービス開発の責任者を務める。

同社では、自治体向けパッケージソフト開発、スマホアプリ(100万ダウンロード突破)の広告プロモーション支援、ものづくりWebサービスの企画・開発・運営、ベトナム開発拠点の設立・運営に従事する。同社在籍時の最後に、ロボット派遣・就職・教育サービスを企画し、リリースする。本サービスのリリース前後では、ロボットに対する人の反応を調査するために、ロボットとともに5千人以上を接客する。

2017年に「楽しい!」を提供するMany合同会社を設立。ロボットと映像と空間を活用したエンターテイメントサービスの提供に力を入れている。

都内の理系大学でテクノロジーの楽しさを体感できる授業を定期的に開講している。



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