これまで述べた機能面だけを見ると、良くできたデリバリーロボットの印象である。しかし、実際はそれだけではなかった。Relayは、デリバリー後に仕事の評価を顧客に尋ねるのだが、そこで良い評価を回答してあげると、喜びのダンスを踊ってくれる。このように、顧客を楽しませる機能があるのだ。また、顧客へのメッセージをタブレット上に文字情報として表示することも可能だ。
表示可能な文字数は40文字程度で、日本語・英語・スペイン語に対応している。伴侶や恋人と一緒に宿泊している部屋にRelayが花束を届ける。そして、タブレットに日頃の感謝の気持ちが表示される。こんな、ロマンチックな使い方も考えられるのではなかろうか。
ロボットには人が言いづらいことを代弁できる特性があり、さらに人には出来ない効果を生み出す可能性があると筆者は感じている。
筆者は過去に、小学生向けの授業に、生徒の一人としてロボットを参加させたことがあった。授業中に子どもたちが騒ぎ始め、注意しても騒ぎが収まらない中、生徒役のロボットに「みんな、静かにして! ボクは真面目に勉強するよ!」と話させた。その瞬間、騒ぎがピタッと収まり、それ以降は子供達が騒ぐことがなくなった。ホテルでの利用シーンではないが、このようにロボットの方が効果を生み出すコミュニケーションというものが必ず存在する。
Relayには、音声はないが、効果音での表現は可能である。文字と効果音を駆使した効果を生むコミュニケーションは、利用が進むにつれて発見できるのではないかと考える。もしかしたら、プロポーズに使うと案外良いのかもしれない。
さらに、デリバリーするだけでなく、意味を持たずに走行するだけの機能が存在する。
Relayには地図を作成する機能が搭載されており、この地図を基に設定した走行経路をうろうろとするのだ。走行中に発見した人の前で立ち止まり、「お届け物はありますか?」と御用聞きのようなメッセージを表示する機能や、顧客と記念撮影をするような機能も存在する。遊園地のマスコットキャラクターが園内を歩き回り、顧客に声を掛けられると記念撮影に応じる。それに近しい役割も出来そうである。
なおRelay本体を走行させることでLiDARが壁や障害物を検知し、自動でドラフト版の地図が作成される。これを人がPC上で修正することで、正確な地図を完成させることになる。
残念ながら防水ではないので、屋外での利用は原則不可である。また、バリアフリーに準拠した設計となっているため高い段差は乗り越えられない。そのため、病院やホテル、オフィス、工場など室内でかつ、高い段差がない場所がRelayの活躍の場となっている。アメリカでは、FedEx(フェデックス)のリペアセンター内で部品供給をするためにRelayが利用されているそうだ。
満充電にかかる時間は6〜8時間。満充電後の稼働時間は4時間程度である。デリバリーをしていない時は自分で充電台に移動し、小まめに充電をしてくれるので、働かせすぎに注意をすれば4時間以上の稼働は可能であると考えられる。
また、本ホテルへのRelayの導入からサポート、保守、メンテナンスサービスは技術商社であるマクニカが担当している。執筆時点では、開発元であるSaviokeの日本法人は設立されていないが、マクニカがトータルサービスを提供していくという。
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