VR/ARが描くモノづくりのミライ 特集

VRの歴史は意外と長く、学生たちは失禁やもちもち感を再現するVRニュース(2/3 ページ)

» 2018年08月16日 09時00分 公開
[小林由美MONOist]

「体験しないと分からない」、IVRCの面白作品4選

 IVRCは学生が企画・制作したインタラクティブ作品の企画力や技術力、芸術性を競うコンテストである。同学会では若手に国際経験の機会を与えようと、受賞者に対してアメリカコンピュータ学会の分科会「SIGGRAPH」の研修費支援や、フランスで開催されるVR展示会「Laval Virtual」への招待など行っている。「毎年、100点ほどの応募がある」(清川氏)。

IVRCの応募件数について(出典:VRSJ)

 応募作品の傾向としては、まさに「体験しないと分からない」作品や、マルチモーダル(音声やジェスチャーなど入力手段が多岐であること)な作品が多く、産業界の現場や正規の研究プロジェクトではありえない奇抜なアイデアが多数登場しているという。「応募作品は非常にユニーク。研究として奥が深いものあれば、ちょっと笑ってしまうものなどもある。機械や映像などさまざまな技術を組み合わせ、画像だけではなく、五感を提示するような作品が多い」(清川氏)。

IVRCの優秀作(出典:VRSJ)

 2017年は名城大学のチーム『甘味処「もっちー」』が「餅餅」で総合優勝している。餅をついたときの「沈み具合」と「伸び具合」をVRで再現し、「餅をついている感覚」を体験するものだ。

 2016年の総合優勝作品である「THE JUGGLINGM@STER」は2016年の慶應義塾大学理工学部チーム「いや,オタクではないです」が制作。ユーザーの経験の有無に関係なく、高度なジャグリングをしているような体験を提供するというものだ。また玉の数をたくさん増やしたり、“物理的制約を超えたモノ”をジャグリングするなど、ありえない設定での体験もできる。

 筑波大学のチーム「シャンピニオン」は、「CHILDHOOD(チャイルドフード)」で2014年に総合優勝した。「身体変換スーツ」によって、ユーザーの身体が子どものサイズに戻ったらどうなるかを体験するという作品だ。身体変換スーツは、ユーザーの視点を低い位置に変換する視線変換機構と、手指の把持動作を縮小する受動型手指外骨格で構成される。「日々の生活を新たな視点・身体を通して知覚することで、新たな発見や体験の提供、身体の制約により誘発される創造的な行動や感覚を喚起・帰還することを目指す」という。

 2015年に電気通信大学のチーム「失禁研究会」が制作した「ユリアラビリンス」は、尿意提示デバイス「ユリア」を使用した、失禁の体験ができるという作品だ。ユリアは体験者の腹部に圧迫感、背部に振動、首筋に冷感、股間部に温かさといった感覚を与えることで、尿意および失禁感を再現する。ユリアラビリンスは、体験者の体内に胃や腸をモデルにした迷路を作り、飲み込んだ水がやがて尿となり排泄(はいせつ)されるまでの流れを視覚的に体験してもらうという仕組み。こちらは総合3位だった。

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