枝豆の売価が3倍になるピンポイント農薬散布技術、オプティムが農家に無償提供スマートアグリ(1/2 ページ)

オプティムが東京都内で「スマート農業アライアンス」の成果発表会を開催。減農薬による付加価値で枝豆の売価が3倍になった「ピンポイント農薬散布テクノロジー」を無償提供することで、農家にとってリスクのないスマート農業の普及に乗り出すことを明らかにした。

» 2018年07月30日 10時00分 公開
[朴尚洙MONOist]
オプティムの菅谷俊二氏 オプティムの菅谷俊二氏

 オプティムは2018年7月23日、東京都内で「スマート農業アライアンス」の成果発表会を開催した。2017年12月に発足した同アライアンスは、現在までに約300団体が参画しており、18都道府県の18品目についてスマート農業の取り組みが始まっている。

 発表会の冒頭、オプティム 社長の菅谷俊二氏は「当社は世界一AI(人工知能)を実用化させる企業になりたいと考えている。そして、IoT(モノのインターネット)やAI、ロボットとさまざまな産業を組み合わせる『○○×IT』により、全ての産業を第4次産業革命型産業にしていく。これらの産業には、水産、建設、医療、鉄道、小売りなどがあるが、もっとも変わるのは農業だと確信している。そこで、約3年前から“楽しく、かっこよく、稼げる農業”を実現するための取り組みを進めてきた。設立から半年で約300団体が参加したスマート農業アライアンスもその一環だ」と語る。

スマート農業アライアンスの概要 スマート農業アライアンスの概要(クリックで拡大) 出典:オプティム

 スマート農業アライアンスで実施しているプロジェクトの中でも、大きな成果が生まれつつあるのが、オプティムが開発した「ピンポイント農薬散布テクノロジー」による減農薬農業だ。自動飛行のドローンによって畑や水田を撮影、AIの画像解析により害虫の位置を特定し、ドローンでピンポイントに農薬を散布する。2017年7月から大豆(枝豆)の生育管理で実証実験を行い、収量や品質は従来と同じで、農薬使用量を90%削減することに成功した。また、収穫した枝豆の残農薬は不検出(0.01ppm未満。通常の農薬散布量だと基準値以下ではあるものの1〜3ppmほど検出される)であり、「スマートえだまめ」として一般的な枝豆の3倍の価格で販売でき、好評のうちに完売することができたという。

大豆生産におけるピンポイント農薬散布テクノロジーの実証実験 大豆生産におけるピンポイント農薬散布テクノロジーの実証実験(クリックで拡大) 出典:オプティム
残留農薬の検査結果「スマートえだまめ」の売価 残留農薬の検査結果(左)と「スマートえだまめ」の売価(右)(クリックで拡大) 出典:オプティム

 しかし、減農薬農業で売価が3倍になると聞いても、多くの農家にとっては半信半疑だろう。ピンポイント農薬散布テクノロジーのコストをかけて、実際に市場に出したら従来と変わらない売価でしか売れなければ、その分赤字になってしまう。オプティムは、そういった声が多いことを理解した上で、ピンポイント農薬散布テクノロジーの無償提供に踏み切る。「全国の生産者と日本中、日本の全作物でやりたい。全国、世界の人々に食べてもらいたい。この技術の開発に数十億円かかったが、まずは生産者の皆さまには無償で使ってもらい、その効果を実感してほしい」(菅谷氏)。

 2018年度で対象となる農作物は大豆、米だ。生産者は、スマート農業アライアンスに参加した上でピンポイント農薬散布テクノロジーの利用を申請すれば無償で利用できる。ビジネスモデルとしては、オプティムがピンポイント農薬散布テクノロジーで生産された大豆と米を市場価格で買い取った上で、「スマートやさい」としての付加価値を上乗せして販売する。この付加価値額から、ピンポイント農薬散布テクノロジーなどの経費を除いた利益を、生産者とオプティム、流通加工業者などで分配する。菅谷氏は「生産者はリスクゼロでスマート農業に取り組むことができ、生産した作物が売れないというリスクもない。その上でレベニューシェアによるキックバックも期待できる。ぜひ多くの生産者に参加してほしい」と強調する。

ピンポイント農薬散布テクノロジーの無償提供におけるビジネスモデル ピンポイント農薬散布テクノロジーの無償提供におけるビジネスモデル(クリックで拡大) 出典:オプティム

 なお、2018年度のピンポイント農薬散布テクノロジーによる買い取りは農地160ha分を想定しており、大豆での想定収量は275トンになるという。

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