ソフトバンクグループは2018年7月19〜20日、都内でユーザーイベント「Softbank World」を開催。本稿では、ソフトバンクグループの代表取締役会長 兼 社長の孫正義氏の基調講演の内容を紹介する。
ソフトバンクグループは2018年7月19〜20日、都内でユーザーイベント「Softbank World」を開催。本稿では、ソフトバンクグループの代表取締役会長 兼 社長の孫正義氏の基調講演の内容を紹介する。
孫氏はまず「未来」についての捉え方を問題提起した。「未来は分からないから起こる状況に受け身で対応していくしかないとよく日本の企業はいう。しかし、それは本当だろうか。未来に起こる多くのことに対する前触れが、今さまざまなところに表れている。それを理解しようとしていないだけではないのだろうか。これらの前触れを敏感に捉えて、誰よりも早く、真剣に、深く考えて、洞察しようとするかどうか、世の中の現状を変えていこうとするのかどうかで、大きく結果が変わってくる」と孫氏は強調する。
その「予測できる未来」を実現するのが「AI(人工知能)」だと孫氏は指摘する。AIの進化には現場側の情報処理を行うエッジコンピューティングと、学習などの大量の情報処理を行うクラウドコンピューティングの両面の進化が欠かせないが、エッジ側の進化の大きなポイントとするのが、プロセッサコアIPベンダーであるArmである。
Armは2016年にソフトバンクが買収。特にスマートフォン向けのプロセッサコアIPでは「全てにArmのコアIPが使われている。100%だ。これが枝葉の部品ではなく自動車でいえばエンジンに相当するコアの領域であるのが特に重要な点だ。今後はスマートフォン向けだけでなくあらゆるものに入っていく。2030年には1兆個のデバイスでArmコアが採用される。そしてその中には『Project Trillium』として開発を進めている機械学習の技術が搭載される」と孫氏は述べる。
一方でクラウドコンピューティング側もAIの学習などで主に使うGPUの性能が加速度的に成長する。「GPUの性能は2017年を1とした場合、2030年には200倍に拡大する。それも2次曲線的に成長するだろう。同様にAIの進化も2次曲線での急速な勢いで伸長する」と孫氏は語る。
これらを背景とし、AIの性能が圧倒的に向上することで「あらゆる産業がAIによって再定義されることになる。AIに置き換えられる仕事などの調査がよく話題になるが、数年の違いは誤差の範囲だ。重要なのはその方向に向かっているということだ。加えて、1度人間が抜かれた場合、2度と抜き返すことはできない。そういうスピードで進化を続けているのだ」と孫氏はAIの価値を強調する。この状況を踏まえ「AIが今後の競争の重要なポイントとなる。AIを制する者が未来を制することになる。これは予測できる未来だ。これに備えるのが大切だ」(孫氏)とする。
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