これらの「あらゆる産業がAIによって再定義される」という点を既に実現している事例として、ソフトバンクビジョンファンド(SVF)によって投資を進めているAI活用企業を、それぞれの代表が登壇して紹介した。
具体的には、AIの産業活用を容易にするツール化を進める米国Petuum、世界最大の配車プラットフォームを展開する中国DiDi Chuxing(滴滴出行)、米国自動車メーカーのGeneral Motors(GM)、モバイルペイメントサービスを展開するインドのPaytm、オンライン保険の中国ZhongAn Insurance、遠隔医療の中国Ping An Good Doctor、ライブロケーションサービスの米国MapBox、データセンターやクラウドを組み合わせたシームレスなストレージプラットフォーム提供を目指す米国Cohesityの8社がそれぞれの取り組みを紹介した。
これらの企業の活動により、モビリティや自動車、決済、保険、医療などの既存産業の姿が大きく変わろうとしている。孫氏は「これらの企業の取り組みで見てきたように、AIは産業に新たなスピードをもたらしたり、低コスト化を実現したり、安全を実現したり、カスタマイズ性を生み出したり、多くの価値をもたらしているということが分かる。これらを十分に活用することで次に何が起こるのかを高精度で推論できるようになり、今までは人間がやってきたものの多くを機械が代替できるようになる。AIが次に何が起こるのかを推論し人間に示唆するような形が生まれてくる」と孫氏は語っている。
これらの「AI」を中心としたあらゆる産業の変革が進む中、「ソフトバンクは通信の会社だと思われているが、もともとは情報革命を起こすことを目指して取り組みを進めてきた企業で、そこはずっと変わっていない。情報革命の中心はPCから始まったが、それがインターネットになり、モバイルインターネットへと変わり、そして今AIへと中心が移ろうとしている」と孫氏は述べる。
一方でSVF設立後、数多くのベンチャー企業などに投資を進めており、メディアなどからは「投資会社になった」とも指摘されているが、「投資を行っているのは事実だが、無目的に行っているわけではない。この1年間はAIを使って成果を生み出すトップサービスベンダーへの投資を加速している。AIはあらゆる産業を再定義するが、その中で各産業のトップカンパニーの数多くの企業の筆頭株主となっている」と孫氏は述べる。
これらをベースとして、各産業のAI活用トップ企業となるファミリー企業同士を組み合わせることでさらに新たな価値創出を目指す。これを「AI群戦略」とし、積極的に推進していく方針を示している。
孫氏は「今後は各産業でGoogleやFacebook、Alibabaなどに匹敵する企業が生まれてくる。SVFを作ってこれらの企業に投資しAI群戦略を推進する戦略的な構えを作った。産業ごとのキラーカンパニーが協力し合う土台を作り、さらに産業の再定義を加速させていく」と考えを述べている。
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