高級車から広がる48Vシステム、ディーゼルエンジンに代わる環境技術にいまさら聞けないクルマのあの話(4)(2/3 ページ)

» 2018年07月17日 06時00分 公開
[友野仙太郎MONOist]

直6と48Vマイルドハイブリッド

約20年ぶりに復活させた直列6気筒エンジンと48Vマイルドハイブリッドシステム(クリックして拡大)

 ダイムラーは、約20年ぶりに復活させた直列6気筒エンジンに48Vマイルドハイブリッドシステムを組み合わせた。オルタネーターとスターターを兼ねたISG(インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター)をクランクシャフトに直結し、エンジンとトランスミッションの間に配置。電動過給器を採用した他、エアコンコンプレッサーとウオーターポンプも電動化した。これにより通常のエンジンでは前方に配置する補機類の駆動用ベルトを廃止し、直6エンジンの最大の課題であったエンジン長を短縮することで復活にこぎつけた。

通常のエンジンでは前方に配置する補機類の駆動用ベルトを廃止し、直6エンジンの最大の課題であったエンジン長を短縮した(クリックして拡大)

 直6エンジンは、ピストン同士が振動を打ち消しあうことによるスムーズな回転フィールが特徴で、古くから高級車に多く用いられてきた。一方で安全性能に対する要求が高まるとともにエンジン長によるクラシャブルゾーンの確保が課題となり、1990年代半ば以降、メーカー各社はV型6気筒への置き換えを進めてきた。

 ただ、近年はディーゼルエンジンを中心に排気ガス浄化性能への要求が一層高まっている。加えてコストダウンの観点からガソリンとディーゼルでエンジン構造を共有化するのは世界的なトレンドとなっている。その中でダイムラーは、触媒のレイアウトによりエンジン冷間時の浄化性能を向上できる上、コストアップの主因である触媒を減らすことが可能な直6エンジンに着目。V6エンジンに比べて軽量化が可能なことや直4エンジンとのモジュラー化によるコストメリットに加えて、車体側の衝突安全技術の向上も全長の長い直6エンジンの復活を後押しした。

直6エンジンと48Vマイルドハイブリッドシステムを採用した「S450」(クリックして拡大)

 実際に直6エンジンと48Vマイルドハイブリッドシステムを採用した「S450」に試乗すると、スムーズな回転フィールと高い静粛性が印象的だ。静粛性の高さはクランクシャフトに直結したISGでモーターの充電電流を調整し、アイドリング回転数を520rpmと低く抑えていることも効いている。

 動力性能は250Nmのトルクを発生するモーターの力に加えて、電動過給器がアクセルペダルを踏んだ瞬間から出力を発生するため、特に「スポーツ」モード選択時は、3lの排気量とは思えない力強い発進加速を味わうことができる。さらに電動過給器とターボチャージャーとの連携もシームレスで、アクセルペダルを踏み込んでエンジン回転数を高めても切り替えポイントを体感することは難しい。スムーズかつ滑らかに高回転まで吹け上がる様はいかにも直6といった雰囲気で、まさに高級車にふさわしい仕上がりといえる。

 一方で電動過給器や2基のターボチャージャー、ISGに加えて、トヨタ自動車のハイブリッド車「プリウス」並みの容量を誇るリチウムイオン電池を組み合わせるダイムラーの48Vシステムは、決してシンプルで低コストとは言い難く、その点からも高級車向けのシステムともいえる。

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