AIを道具として進化させていく上での取り組みとしては、2017年10月に買収を発表した米国のデータ解析会社であるアリモ(Arimo)のようなM&Aやパートナーシップに加えて、国内外大学などとのオープンイノベーションがある。
また「サイバーフィジカル時代のAI」として、E3-AIというコンセプトを打ち出した。E3-AIは、コストと性能を両立する「Embedded(組み込み)」、AI判断の根拠から対策が打てる「Explainable(説明可能)」、使うほど進化する「Evolutional(進化)」から成る。「Embeddedはこれまでも注力してきたマイコンへのアルゴリズム組み込みなどで、画像や音声の認識を中心に実績があり、自前でやっていける基礎がある。あまり取り組んでこなかったExplainableとEvolutionalについては、M&Aやパートナーシップ、オープンイノベーションを積極的に活用していく」(九津見氏)としている。
また、道具としてのAIを、ドメイン知識を持つ人々に展開する方向性としては、「Home Tech」「Mobility」「Energy」の3分野と、AI展開の基盤となる「Deep Learning&Data Analytics」を組み合わせた「3+1」に注力する。
「Home Tech」では、新たな住空間の提案に向けた「HomeX」プロジェクトなどでAIを活用している。「Mobility」では、サイバー攻撃パターンの学習や、自動運転のセンシング処理、カーシェアリングの配車管理などがAIの活用事例となる。そして、2017年度の1年間で最もAIの相談件数が多かった「Energy」では、バッテリーマネジメントサービスへの活用が検討されている。
この他、ドメイン知識を持つ人々がより容易にAIを道具として利用できるようにするDAICC(Data&AI for Co-Creation、ダイク)サービスを2018年春からスタートしており、既に約30件の相談が入っているという。
なお、パナソニックでは、2020年度までにAI人材を1000人に増やす方針を示している。これはAIそのものの開発を行う人材というよりも、AIを道具として使いこなす人材となる。そのために用意したAI人材育成プログラムも好評で、2017年度末までのAI人材数は予定の220人を上回る318人となった。このうち約100人がAIソリューションセンターの人員となる。今後は2018年度末に約500人まで増やし、その後2020年度末までの1000人の達成を目指す。
九津見氏は「今後5〜10年以内に、AIを活用した事業の売り上げ規模を数百億円にまで高めたい」と述べている。
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