さらにベイル氏がマインドスフィアの特徴として強調するのが、開発コンセプトにも含む「オープンさ」である。
産業用IoTプラットフォームには数多くの企業が参入し、独自基盤を打ち出しているが「ファナックなどの主導する『FIELD system』やエッジコンピューティングの『Edgecross』などさまざまなIoTプラットフォームがあるが、マインドスフィアと競合するものではない。連携を取る形で進めていく。ユーザーにとってデータを取得しやすくなったり、データ連携させることでメリットが得られたりするのであれば、連携させるべきだと考えている。コントローラーなど制御機器ではファナックや三菱電機は変わらず競合企業だが、産業用IoT基盤では協力していく存在だ」とベイル氏は考えを述べている。
これらのオープンさや柔軟性の向上に向けての取り組みは、エッジ側の機器や情報取得に限った話ではない。取得したデータの基盤についても選択肢を広げている。
マインドスフィアは、もともとはSAPのIaaS(Infrastructure as a Service)環境をベースとして開発されたPaaS(Platform as a Service)サービスだった。ただ、2017年にはIaaSとしてAmazon Web Services(AWS)やMicrosoft Azure(Azure)、AtoS(アトス)などにも対応可能とすることが発表され、実際にAWS対応の「MindSphereバージョン3」などがリリースされている。
さらに、Azureが「Azure Stack」などでオンプレミス環境との連携を強化したことなどを受け、IaaSにAzureを採用した場合はクラウドだけでなくオンプレミス環境でも使用できるようになるという。これにより、データについては工場内から出したくはないがマインドスフィア上で稼働するアプリケーションを使いたいという場合でも対応可能となる。オンプレミスでの対応についてはまずはドイツから開始し、日本での対応は2019年初めになる見込みだという。
利便性を向上させるマインドスフィアだが、現状の課題としてベイル氏が挙げるのが「アプリ数」である。2018年4月時点で約50のアプリがリリースされているが「産業用途で活用することを考えるとまだまだ十分な数がリリースされていない。これを早期に増やしていくことが重要となる」と述べている。
シーメンスそのものが提供するアプリの充実などにも取り組み、マインドスフィア上でモーターなどのドライブ情報を収集し見える化や評価などを行う「SIDRIVE IQ」など、アプリのリリースを強化する。さらにユーザー企業やパートナー企業からのアプリ開発とリリースも活性化を図る。
これらの取り組みの一環として重視するのがユーザーコミュニティーの強化である。マインドスフィア活用のベストプラクティスを共有するユーザーコミュニティー「MindSphere World(マインドスフィアワールド)」を新たに立ち上げた。マインドスフィアのコミュニティーとしては、マインドスフィアを活用してビジネスを展開するパートナー会「マインドスフィアパートナープログラム」が存在したが、それとは別に立ち上げた。
マインドスフィアワールドは、まずはドイツで19社が参加。今後、米国、イタリア、韓国、日本で、それぞれの国ごとの「マインドスフィアワールド」を立ち上げるという。
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