産業用IoTのOS目指す「マインドスフィア」の現在地:ハノーバーメッセ2018(3/3 ページ)
こうした取り組みを進める中、日本でも導入が加速しているという。導入企業数は「まだ2桁だが、1年間で5倍以上に増えた」とシーメンス(日本法人)の専務執行役員である島田太郎氏は手応えについて語る。
特に導入を加速させた要因として大きかったのがAWS対応の「MindSphereバージョン3」がリリースされたことだという。島田氏は「バージョン3.0のリリースで、日本でもようやく立ち上がりの手応えを感じられる状況になってきた。1番の要因は接続性の向上があり、APIでさまざまな機器と自由に接続できるようになったことがある。その他、ライセンスフィーなどコストをかけずに導入できることが知られ、ハードルが下がってきたことも大きい。またデータの収納先の選択肢を広げられたことも導入先を広げることにつながっている」と要因を語る。
データ収納先としては、AWSへの対応によりデータ収納についての高いコストパフォーマンスを得られる。また、マインドスフィアでAzureを採用できるようになったということも先述したが、Azureによるオンプレミスでのデータ収納については「日本では特に大きなニーズがある。工場内などから情報を出すことなく、さまざまなデータ活用を行いたいというニーズがあり、待ち望まれている状況だ」(島田氏)と高い反応を得ているという。
躍進のきっかけとなった「MindSphereバージョン3」はAWS対応としたことがポイント。パートナーとしてのAWSコーナーも多くの人を集めていた(クリックで拡大)
マインドスフィアのライセンスフィーは月額3万〜5万円とされており「価格がハードルではなくなっている。大手企業ではなく中堅中小企業でも十分導入できる価格である。実際に大手からの話もあるが中堅中小企業からの問い合わせが多く、導入への動きも早い」と島田氏は語る。
「大手企業は自社で独自のシステムが構築できる。中堅中小企業の方が産業用IoT基盤を活用する利点を作ることができる。既に費用的なハードルも下げ、接続性などの向上も進めていることから、いよいよ使いやすい状況に入ってきた」と島田氏は今後の導入加速について自信を見せている。
今後について島田氏は「産業用クラウドOSで日本で一番になる。特に日本の95%を占める中堅中小企業からムーブメントを起こしていきたい」と抱負を述べている。
シーメンス(日本法人)代表取締役社長兼CEOの藤田研一氏(左)と同専務執行役員の島田氏(右)(クリックで拡大)
≫ハノーバーメッセ2018特集はこちら
- インダストリー4.0は実装段階と訴えるシーメンス、マインドスフィアも新フェーズ
シーメンスはハノーバーメッセ2018において、プレスカンファレンスを開催し、インダストリー4.0が既に実装段階に入っており、成果を残していることを強調。合わせて、同社の推進する産業用IoT基盤「マインドスフィア」の進捗状況と、TSNなど新たな技術への取り組み状況を紹介した。
- シーメンスがデジタル戦略を説明「高齢化進む日独でこそデジタル化が力に」
シーメンス(Siemens)がデジタル戦略を説明。ドイツ本社で取締役 CTOを務めるローランド・ブッシュ氏は「新技術とデジタル化によって、指数関数的な成長や、バリューチェーンの中で最も脆弱な部分の排除など、大きな変革が起きていく」と語った。
- スマートファクトリーはエッジリッチが鮮明化、カギは「意味あるデータ」
2017年はスマートファクトリー化への取り組みが大きく加速し、実導入レベルでの動きが大きく広がった1年となった。現実的な運用と成果を考えた際にあらためて注目されたのが「エッジリッチ」「エッジヘビー」の重要性である。2018年はAIを含めたエッジ領域の強化がさらに進む見込みだ。
- スマートファクトリーがいよいよ現実解へ、期待される「見える化」の先
ドイツのインダストリー4.0がきっかけとなり関心が高まった、IoTを活用したスマートファクトリー化への動きだが、2017年は現実的成果が期待される1年となりそうだ。既に多くの実証成果が発表されているが、2017年は、実導入ベースでの成功事例が生まれることが期待される。
- ドイツが描く第4次産業革命「インダストリー4.0」とは?【前編】
「インダストリー4.0(Industrie 4.0)」という言葉をご存じだろうか? 「インダストリー4.0」は、ドイツ政府が産官学の総力を結集しモノづくりの高度化を目指す戦略的プロジェクトだ。インダストリー4.0とは何なのか。同プロジェクトに参画するドイツBeckhoff Automationグループに所属する筆者が解説する。
- インダストリー4.0の地味化はいい傾向?悪い傾向?
製造業の産業構造を大きく変えるといわれている「第4次産業革命」。本連載では、第4次産業革命で起きていることや、必要となることについてお伝えしています。第13回となる今回は、2017年4月に開催されたドイツの「ハノーバーメッセ 2017」で見えた傾向についてまとめます。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.