SAPジャパンは2018年5月25日、IoT(モノのインターネット)およびデジタル変革についての現状と戦略について紹介した。
SAPジャパンは2018年5月25日、IoT(モノのインターネット)およびデジタル変革についての現状と戦略について紹介。「IoTで見える化を実現するだけならSAPである必要はない。しかし、ビジネスプロセスと融合させるにはSAP以外に選択肢はない」(SAPジャパン ソリューション統括本部長の森川衡氏)と「SAP Leonardo」によるビジネス変革に自信を見せた。
SAPのデジタル変革に関連する製品やサービスを総括するブランド「SAP Leonardo(以下、レオナルド)」は海外では2016年にリリース。日本では「企業のデジタル変革を支える製品とサービスを包括するブランド」として2017年10月から本格展開を開始している※)。
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IoTおよびデジタル変革について森川氏は「企業の取り組みは必ずしもうまくいっていない場合も多い。『実験から先に行かない』『業務につながらない』『プロジェクトを巨大化しすぎて身動きが取れない』『まだ何も手を付けられない』などさまざまな失敗事例が生まれている。これらを何とかしたいというのがレオナルドの意義だ」と述べる。
そしてレオナルドを構成するものとして「テクノロジー」「アクセラレータ―」「導入手法」の3つを挙げ「低リスクかつ短期間でデジタル革新を実現するイノベーションシステム」と位置付けた。森川氏は「テクノロジーとして訴える内容は他のIoTプラットフォームとそれほど大きな差はない。レオナルドの特徴はアクセラレータ―にある。業種別のアクセラレーターとIoTの技術面でのアクセラレーターを用意し、レディメード(既製品)としてそれらを組み合わせることで業務に適合し早期に成果の出せるIoT基盤を構築できる」と利点について紹介する。
例えば、「組み立て製造業」「予防保全」「ビークルインサイト」を組み合わせることで販売後製品をIoTを活用して把握し、顧客価値の工場や計画保全、新たなサービスビジネスの創出などが実現できるが、その基盤を簡単に用意できるという仕組みである。
アクセラレーターは現在は業種別は7種類、技術別が7種類用意されているが、今後さらに業種や技術を増やしていく方針だという。「SAPジャパンでは対象業種を25種類として見ているが、業種アクセラレーターも25までは増やしていく」(SAPジャパン 常務執行役員 デジタルエンタープライズ事業担当 宮田伸一氏)。
さらに森川氏は「これらのアクセラレーターの全ての交点に具体的に顧客が存在しているというのが強みだ。顧客の具体的な課題を解決する中で共通する課題をアクセラレーターとして集約している。現状では日本の事例は少ないように見えるが、日本でも数多くの顧客に対して実装が進んでおり、事例なども適宜紹介していきたい」と述べている。
導入手法としても「デザイン思考」などで先行する利点を生かし、課題解決を実現する新たなソリューション創出などを支援する。「コンサルティング企業などとの違いは、出てきたアイデアをすぐにプロトタイプにして実証できる点だ。実際の業務の中で簡単に実証できるスピード感が強みとなる」(森川氏)。
これらの取り組みの中で重要になるのが「業務システムとの融合」である。森川氏は「IoTによりデータを取得することは重要だが、ビジネスとして取り組む中では、具体的に次のアクションにつなげることがそれ以上に重要である。得た情報をビジネスプロセスと融合してどのようにアクションにつなげ、価値を生み出すかというサイクルを回さなければならない」と強調する。
そして「IoTにより現場データを取得するだけであれば既存のIoTプラットフォームやPDMのようなシステムで十分でSAPのシステムは必要ない。しかし、IoTで得たデータを業務システムに反映しビジネスプロセスを変革するループを回すにはSAP以外の選択肢はないと考えている。この価値を日本でも積極的に訴えていく」森川氏は述べている。
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