本連載「トポロジー最適化とは何か」を通して、設計の中でトポロジー最適化をどのように生かしていけるのかを探求しつつ、少しでも記事を読んでくださる皆さまのお役に立ちたいと思っています。
MONOist メカ設計フォーラム読者の皆さま、こんにちは。「デスクトップ3Dプリンタ「Form2」を設計業務で使う」を2016年11月に公開して以来、ごぶさたでございました。その間にも、技術の進歩はたゆまず進み、3Dプリンタも3D CADも、そしてCAEも一層身近なものになってきたと思います。3D CADや3Dデータを活用するソリューションについても、既にMONOistの執筆者さんたちが太っ腹にいろいろなノウハウを示してくださっていますね。
さてそのような中、この2017〜2018年にかけて、よく耳にするようになった言葉があります。それが「トポロジー最適化(位相最適化)」です。トポロジー最適化自体は急に登場してきたものではなく、以前から存在する技術です。少しでもトポロジー最適化をかじっている人は、1980年代にミシガン大学 教授の菊池昇氏がトポロジー最適化についての論文を発表していたり、その後、京都大学 教授の西脇眞二氏など、多くの研究者の方がこの分野に貢献していらっしゃることはご存じではないかと思います。トポロジー最適化商用ソフトウェアも製造業の現場で既に活用されています。
3Dプリンターではないですが、製造業において「最近活用が進んできている」と紹介されるさまさまな技術は、「新しいものが出てきたもの」というよりは、「従来あって、でもばか高くて、かつツールの使い方が難しくて、一部の人や会社しか使えなかったもの」が、いわゆる「民主化」によって手を出しやすくなったといえるでしょう。
そして……、どうもトポロジー最適化もそうかもしれません。この1〜2年で急にCADベンダーからも聞こえだしてきたように思うのです。
私自身は、社会人になって最初の仕事が非線形CAEに関わるものだったため、CAEに対する関わりは一応長い方ではあるつもりですが、最適化自体は「多少は知っている程度」です。そのため、本連載「トポロジー最適化とは何か」を通して、設計の中でトポロジー最適化をどのように生かしていけるのかを探求しつつ、少しでも記事を読んでくださる皆さまのお役に立ちたいと思っています。連載中、多少脱線するかもしれませんが、それもトポロジー最適化に対する知見を深めるためと思ってご容赦ください。
トポロジー最適化は、「設計最適化ツール(ソフト)」と呼ばれるツール群の1つと位置付けてよいでしょう。まあ、設計最適化というと言葉自体の意味する範囲は広いと思うのですが、ここでは部品などの形状を設計の視点から最適化するとしましょう。
その観点から見ると、実は設計のためのソフトウェアが提供する機能としては、3つあると考えられます。既にご存じの方もいらっしゃると思いますが、「寸法最適化」「形状最適化」そして「トポロジー最適化」です。
寸法最適化とは、文字通り、「既に製品の設計において定義されている寸法などを設計の最適化を行う際の変数とするもの」です。つまり、変化する対象はその「部品の寸法」です。これについては、いわゆるパラメトリックのソリッドモデラーと従来のCAEという組み合わせで考えれば分かりやすいと思います。パラメータによる最適化ともいえますね。
「形状そのものが大きく変化することはないが、例えば安全率の目標を狙って過剰設計にならないように、でも目標を下回ることのないように寸法を調整していく」という操作になってきますね。あくまでも定義しているパラメータの範囲の中でしか最適化を行っていけないので、設計上の自由度は一番少ないといえますが、設計が固まってきた段階での調整を施していく上では現実的な選択肢ともいえますね。だいぶ設計が固まってきた段階で突拍子もない結果が出てきても扱いに困りますから。
形状最適化とは、「最適化の対象となる部品などの表面形状を設計最適化の変数とするもの」です。つまり変化の対象は「部品の外形形状」です。要するにその物体の表面、というか境界を大胆に動かしていくので、丸が三角だったり四角だったりと極端な場合には、最初の場合と見た目が大きく変わってしまうこともあります。ただし、後述するトポロジー最適化とは違い、位相自体が変わることはないので、例えば、単なる塊だったものに穴があいたりということはありません。
ということは「その部品の位相自体が変わってしまっては困るが、あるバウンダリーの範囲内で、形状は自由に変わっていいよ」という条件であれば使い手がありそうです。
「革新的な発想は必要ないが、まだ最終段階でもなく少し自由度を残した状態で最適化の検討を進めていきたい」なんていう時にふさわしそうですね。
例えば、このようなモデルをで形状最適化してみたいと思います。
で、その解析モデルはこんな感じです。
解析モデルはミッドレンジ3D CADの解析ツール「SOLIDWORKS Simulation」でメッシュを作成し必要な境界条件を付けた後に、CAEソルバー「Nastran」のバルクデータ形式で構造最適設計ソフトウェア「OPTISHAPE-TS」にインポートしています。で、結果はこうなりました。
まだ、ソフトの使い方に慣れていなくて、設定がいい加減かもしれないので、そこはご容赦くださいませ。でも、多分“それっぽい”と思います。拘束側の端面はあえて上下のエッジのみの拘束にしてあります。真ん中がくぼんでH鋼みたいになっていますね。いずれにしても形状は結構変わってはいるものの、トポロジーは変わっていませんね。
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