理化学研究所とリコーは、3Dプリンタを用いて、患者の骨の内部を含む欠損部位の形状を再現する手法を開発した。作製した3次元造形人工骨は、数分間水洗いすれば細胞が増殖できる状態になり、強度や骨置換性に優れていることが分かった。
理化学研究所は2018年4月14日、患者の骨の内部を含む欠損部位の形状を3Dプリンタで再現する手法を発表した。同研究所光量子工学研究センター画像情報処理研究チーム 客員研究員の大山慎太郎氏らとリコーの共同研究による成果だ。
この手法は、インクジェット装置によって粉末材料に結合剤を塗布し、固着させて積層する3Dプリンタの「BJ(Binder Jetting)方式」をベースとする。同研究では、α-リン酸三カルシウム(α-CTP)の粉末層を作製し、そこにリコー製の試作機を用いてエチドロン酸などの新しい凝固インクを塗布して造形した。
α-CTPは、エチドロン酸とキレート反応により硬化し、凝固インク塗布後は数秒で十分に硬化する。相対密度(この場合は造形物中の粉末の占有率)は60%ながら、自家骨と同等の25〜30MPaの圧縮強度を持つ。
さらに、プロセス条件を調整し、さまざまな形状での造形や細胞が侵入できる200μm程度の穴を空けることを試みた。作製した3次元造形人工骨は、数分水洗いすれば細胞が増殖可能な状態となって焼成も不要で、高効率での造形が期待できる。
作製した人工骨については、培養環境下での培養細胞の増殖率と動物への移植実験の組織観察から、その生体適合性を調べた。人工骨上に細胞の増殖が確認され、移植後も周辺組織が進入して本来の骨組織に入れ替わること、また、本来の骨が持つリモデリング機能を阻害しない良好な人工骨であることが分かった。
同手法は、個々の患者に合わせた人工骨造形ができるオーダーメイド医療への展開や、骨に関する疾患の早期治療などへの貢献が期待される。
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