MONOist主催セミナー「製造業向けVR/AR/MRセミナー〜設計・開発が変わる! モノづくりの新たな道」では、MONOistの執筆者であるプロノハーツの製造業VRエヴァンジェリスト 早稲田治慶氏がVR/AR/MRの基礎知識と製造業の活用について解説した。事例講演では本田技研技術研究所 四輪R&Dセンター 鈴鹿分室開発推進BL主任研究員 西川活氏が登壇し、生産現場でのVR導入について、データ構築、大画面型と没入型の使い分けのノウハウなどを紹介した。
MONOistは2018年3月20日、東京都内で「製造業向けVR/AR/MRセミナー〜設計・開発が変わる! モノづくりの新たな道」を開催した。
最初の講演では、MONOistの執筆者であるプロノハーツの製造業VRエヴァンジェリスト 早稲田治慶氏が「勝ちに行ける製造業のためのバーチャルリアリティと3D CAD活用」をテーマにVR/AR/MRの基礎を解説。トリを飾る事例講演では、「四輪開発/生産連携におけるヴァーチャルリアリティーの量産準備活用」をテーマに、本田技研技術研究所四輪R&Dセンター 鈴鹿分室開発推進BL主任研究員西川活氏が自社事例を紹介した。
これらの他、「インダストリアル向けARソリューションThing Worx Studioのご紹介」(講師=PTCジャパン(以下、PTC) シニアIoTプリセールス・スペシャリスト西啓氏)「プロダクトデザインを加速する最先端VRソリューション」(ダッソー・システムズ CATIA Design Center of Excellenceソリューション・コンサルタント長谷川真人氏)、「モノづくりにイノベーションをもたらすVR技術のご紹介」(SCSKデザインソリューション部第3課長岸元睦氏)、「デザインシンキングでVR/AR活用を!」(デル 最高技術責任者 黒田晴彦氏、同クライアント・ソリューションズ統括本部スペシャリストセールス部長中島章氏)の4つのセッションを実施した。
VR/AR/MRの基礎解説を行ったプロノハーツの早稲田氏は、3D CADでの小型CNC切削加工機の設計、CAM開発プログラミング、加工機の補正システム開発などの業務を経験。現在勤務するプロノハーツでは製造業向けVRシステムの開発に取り組んでいる。「おそらく日本で唯一の製造業VRエヴァンジェリスト(伝道者)」(早稲田氏)と、自身を紹介した。
プロノハーツは商品開発のプロデュースを中心に、CAD/CAM/CAEソフトの販売、サポート、教育、コンサルティングなどの業務を展開。VR関連では、3D CADデータを簡単操作でコンバートし、VRでの実寸大レビューを実現できる、VRヘッドマウントディスプレイによる製造業向けデザインレビューシステム「prono DR」を開発している。
早稲田氏はVRやAR、MRという言葉の定義について説明。「VR」はVirtual Realityの略で「事実上の、実質的な現実感」という意味がある(「仮想」ではない)。「AR」はAugmented Reality「拡張現実感」の略。「MR」はMixed Reality、「複合現実感」の略であり、ARとMRの違いについては「MRはデプス(視野内の深度)が取得されている。体験者の手なども含めた現実空間物体の奥行きと表示される3Dオブジェクトが相互作用可能であることをMRの要件と考えている」と解説した。
製造業で実寸の立体を誰でも同じように見られるようにVRは活用される。「ただ、設計レビューには必ずしもVRを使えばよいというわけではない。手のひらサイズの量産部品は3Dプリンタなどで試作してレビューした方が良い場合も多い」(早稲田氏)。しかし、製造業で設計するものは、多数試作できる小さなものばかりではない。製作台数の少ない、もしくは1つしか作らない、特注の大型機器、港湾クレーンなど大型構造物、プラント建屋は3Dプリンタによる試作は難しい。「作る前に実寸大で見て、歩き回って検討することができる手段、自分が小さくなってみて歩き回る手段が製造業VRだ」と早稲田氏は述べた。
さらに、3D CADのオルソ(平行法=パースが付いていない)画面の回転や紙の図面から立体形状を創造して正しく把握できるのは、長い時間訓練された人(=設計者)だけであり、仕事上での検討には訓練されていない人(現場の人、経営者、顧客)も参加するため、ここで齟齬が起きるなど、紙の図面だけでは不十分となる。VRでの実寸パース3D CADモデル立体像は、「訓練された人も、されていない人も同じ大きさで、形で見ることが可能なことから大きな効果をもたらす」としている。
この他、日本の製造業でのこれまでの状況を説明した。MRではキヤノンの「MREAL(エムリアル)」が普及しているという。同システムは、現実世界と仮想世界を融合させる映像技術で、現実のスペースにあたかもそこにあるかのように、3Dデータを実寸大で重ね合わせて表示する。さらに「(ヘッドセットディスプレイを)頭にかけると、酔うという人が多い中、この製品はほとんど酔わないことから、大企業などで使われた」という。ただ、システム全体が高額なため中小企業はなかなか手が届きにくいという点もある。それが、ヘッドセット構造を簡単にしたOculus Rift(オキュラス・リフト)などの登場でVRの大幅な低価格が実現したことなどを紹介した。
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