スマートカメラの活用に加え、アイランドシティ店での実証のもう1つの柱が「スマートレジカート」の導入である。「スマートレジカート」は、セルフレジ機能を持ったカートで、顧客が商品を選んだ時にカートでバーコードを読み取り、店舗を出るときにカートに割り振られたバーコードを読むことで決済するという仕組みである。専用のプリペイドカードでログインすることで通常のレジに並ぶことなくボタン1つで会計できる。買い物客のレジ待ち時間を解消するとともに、レジスタッフの人手不足を解消する狙いだ。
現状では、個数確認など確認作業を行うスタッフと最終的にカートのバーコードを読み取るスタッフの2つのカウンターを通過することで決済する仕組みとなっている。トライアル・シェアードサービスの代表取締役社長の矢野博之氏は「現状では課題もまだまだ多いのも事実だが、多くの顧客に活用いただている。トラブルなく進んだ場合はかなり早く、待ち時間解消などにも貢献する」と述べている。
スマートレジカートは、スタートアップ企業であるRemmoがトライアルカンパニーと共同開発した。決済機能などの他、レコメンド機能が搭載されており、購買体験の向上を実現する。レコメンド機能では、売り場でスキャンされた製品情報に基づいた情報が表示され、買い忘れ防止や潜在的ニーズの喚起などに活用することを検討しているという。
アイランドシティ店でのカメラやレジカートを使った購買体験の向上などに対し、2018年2月19日からはRFIDを使った新たな実証実験「ウォークスルー型RFID会計ソリューション」も開始している。これはトライアルカンパニーの本社内の実験店舗「トライアル ラボ店」で2018年2月19日から18日間の実証を行うものだ。
主に画像とカートを使ったレジの最適化を目指したアイランドシティ店での取り組みに対し「ウォークスルー型RFID会計ソリューション」では各製品にRFIDチップを付与したバーコードシールを貼付し、このRFIDをウォークスルー型のレジが読み取ることで、袋にいれたままで通り抜けるだけで決済が可能な仕組みである。パナソニックとの共同開発で実現した。
プリペイドカードなどの情報を事前にスキャンすることで、商品読み取り後そのまま精算が完了し、会計時間を大幅に短縮することが可能となる。
RFIDシールは事前に製品に貼付する必要があるが、一部商品でトライアルカンパニーが保有する製造、物流工程も活用したデータ管理およびRFIDタギングを実施。製造工程からRFIDを貼付することで個体管理とトレーサビリティーを実現する。RFIDとBIツールを組み合わせることでサプライチェーン全体の可視化を実現する考えである。同社では「現状ではサプライチェーン全体の管理ができているわけではないが、自社製品での実証を通じて得られた知見で、全体を統合して管理できる仕組みを模索したい」と述べている。
RFIDの可能性について西川氏は「流通の変革を進めていく上で決済のスピードを上げることは重要である。アイランドシティ店ではスマートレジカートを活用しているが、今後さらなる改革や付加価値を実現していく上で、レジタグの新たな可能性などもある」と期待を寄せる。ただ、現状では「アイテム数が多い店舗がほとんどの中で、今のRFIDだと張り付け作業が伴う。この負担を低減できなければ実導入は難しい。全体では無理でも一部で実施するなど、工夫が必要だ」と西川氏はRFIDの課題について述べている。
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