日々の出来高を左右する作業の早さは、「動作の有効性(適正、熟練度)」と「動作の早さ(努力、やる気)」の二点に分解して説明することができます。
「動作の有効性」は、その作業を行う人の“適正”と“熟練の程度”の2つの要因が起因するわけですが、その人の適正に合った作業の分担や作業方法、熟練度を増すための訓練や経験などを積み重ねることによって動作の有効性は増していくものです。
次に、「動作の早さ(努力、やる気)」ですが、ここで、もう一度実験をしてみましょう。けい線が引かれた用紙を準備してください。その用紙に自分の名前を楷書でキチンと3分間書いてみましょう。はじめは“A=普通の早さで書く”、次は、丁寧さを変えないない程度に“B=ヤル気を出して速く書く”の2種類の書き方で書いてみてください。
さて、AとBとでは、どのくらいの時間差になったでしょうか。さらに、何人かのデータを集めて平均値を出してみると興味深い結果が得られると思います。
一般的に、多くの実験や観察の結果、人は継続して作業を行っている場合、任意の速度を選択するのではなく、普通に作業している状態(普通の早さ)と、意識して努力している状態(ヤル気の早さ)の2つの作業速度(作業ペース)を持っていることが明らかになっています。普通の速さを100%とすると、ヤル気の早さは、125%前後といわれています。そして、この「ヤル気の速度」は、以下によって決定されてくるものとされています。
以上に説明しました「人には普通の作業の早さと、ヤル気の速さがある」ということと、前にも述べた通り、「作業には、それぞれに適正な速さがある」ということを考え合わせますと、次に述べます「標準の作業速度」という概念が考えられます。
「標準作業速度」とは、『平均的な作業者が、正常な作業条件のもとで、標準の作業方法に従い、通常の努力によって作業を行うときの作業ペース』とされていますが、標準作業速度に対する具体的な内容として、以下の項目が挙げられます。
従って、厳密には、その作業の環境や作業条件などによってさまざまな値に決定されます。標準時間は、同一の作業でも作業条件や職場環境によっても異なるのは当然ですが、その基本となる「標準作業速度」は共通であって、変わるものではありません。
作業の速さは、具体的に測定したり、表現したりすることは難しいものです。そこで、一般的には、各種の作業について、標準速度で作業を行っている状態をビデオなどで動画撮影しておき、これと実際の作業の速さとを比較するという方法がとられています。
また、動作の速さの基準を検討する際によく使用される方法に、標準時間(ST)の設定手法として世界的に広く活用されている「ワークファクター法(Work-Factor Plan)」という手法があります。ワークファクター法は、以下の“4つの要因”の変化で「動作標準時間」を決められるとした手法です。
このワークファクター法を用いて算出された標準時間を基準にして、その速度の何%というような表現方法もあります。このように、実際の作業速度を評価することを「レイティング(Rating)」といいます。ストップウォッチによる時間研究を用いて標準時間を設定しようとする場合、実際に測定された作業時間値を標準の作業条件と標準の作業速度で行われた場合に換算して、どのくらいの時間が必要であろうかということを見積もることが必要となります。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.