組み込み業界に大インパクト「Amazon FreeRTOS」の衝撃IoT観測所(40)(2/4 ページ)

» 2017年12月28日 10時00分 公開
[大原雄介MONOist]

「FreeRTOS」のボトルネックはライセンス形態

 FreeRTOSそのものには、ファイルシステムとかネットワーク、その他もろもろの周辺機器へのサポートは無い。これについては「FreeRTOS+」という形で、そうした機能を追加したものが用意されている。例えばTCP/IPならこちら(https://www.freertos.org/FreeRTOS-Plus/FreeRTOS_Plus_TCP/index.html)のページに、ソースやAPIドキュメントが用意されているので、これを組み込むとTCP/IPスタックが利用できるようになる、という形だ。

 もっともTCP/IPスタックだけ組み込んでもネットワークドライバがないと意味がないわけで、ベンダーから提供されていない場合の対処法(https://www.freertos.org/FreeRTOS-Plus/FreeRTOS_Plus_TCP/FreeRTOS_TCP_Porting.html)まで掲載されていたりする。他にセンサー類だったり、ディスプレイだったりとさまざまなものが接続される場合、それらについてはベンダー任せであり、FreeRTOSとしてのサポートは基本的には無い。このあたりは多数のアーキテクチャをサポートすることの代償ともいえるだろう。

 さてこのFreeRTOS、開発を主導し、サポートとメンテナンスを行っているのはReal Time Engineersであった。FreeRTOSそのものの権利も、Real Time Engineersが保有していた(図1)。ただし名前の通り、無償でソースコードまで入手可能で、製品にも利用できた。問題は、このFreeRTOSのライセンスがGPL V2だったことだ。このため、入手してもそれをカスタマイズして製品化を行ったりしたら、それを公開する義務が発生する。実はこれがボトルネックとなる点だった。

図1 図1 2017年7月11日時点におけるスナップショット。"FreeRTOS is solely owned, run, developed and maintained by Real Time Engineers Ltd."と明記されている(クリックで拡大)

 これは実は回避策があり、ドイツのWITTENSTEIN high integrity systemsが提供するOpenRTOS(https://www.highintegritysystems.com/openrtos/)を使うことだ。OpenRTOSは、FreeRTOSのうちGPLで公開されている部分を全て非GPLなものに置き換えたFreeRTOS互換のOSで、商用利用ももちろん可能である。ただしこちらはWITTENSTEIN high integrity systemsの製品であり、有償である。ちなみに、このOpenRTOSに対して、機能安全規格で最も厳しい要求となるIEC 61508-3 SIL 3とISO 26262 ASIL Dの認証取得を可能にしたSafeRTOS(https://www.highintegritysystems.com/safertos/)も、やはりWITTENSTEIN high integrity systemsから入手できる(こちらも有償の製品)。

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