大阪大学は、ヒトに感染する熱帯熱マラリア原虫が免疫応答を抑えて重症化を引き起こすメカニズムを発見した。感染した赤血球上にタンパク質「RIFIN」が発現し、免疫反応を抑制することでマラリアが重症化する。
大阪大学は2017年11月30日、ヒトに感染する熱帯熱マラリア原虫が、免疫応答を抑えて重症化を引き起こす分子メカニズムを発見したと発表した。同大学微生物病研究所 特任研究員の齋藤史路氏らの研究グループが研究を行った。
研究チームでは、さまざまな抑制化受容体と熱帯熱マラリア原虫に感染した赤血球との相互作用を解析し、抑制化受容体「LILRB1」に結合する分子が熱帯熱マラリア原虫に感染した赤血球上に発現していることを突き止めた。そこで、質量分析法で解析を行い、熱帯熱マラリア原虫のタンパク質「RIFIN」がLILRB1に結合することを明らかにした。
さらに、RIFINを発現するマラリア原虫の感染赤血球を用いて、B細胞による抗体産生に与える影響を解析。感染赤血球上に発現するRIFINは、B細胞からの抗体産生を抑えることが判明した。感染赤血球を攻撃するナチュラルキラー細胞にもLILRB1は発現していたため、RIFINがナチュラルキラー細胞の活性化を抑制することも分かった。
マラリアが重症化しなかった患者に比べ、重症化した患者の感染赤血球上にはLILRB1と結合するRIFINが強く発現していることが分かった。このことから、LILRB1とRIFINの結合はマラリアの重症化に関与していることが明らかになった。
今後、LILRB1とRIFINとの結合の阻害法を研究することで、マラリアワクチンの開発やマラリアの重症化を防ぐ治療薬の開発に貢献することが期待される。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.