神話の地から最先端の発信を――ITしまね開業支援事業(島根県)地方発!次世代イノベーション×MONOist転職

「次世代の地方創生」をテーマに、自治体の取り組みや産学連携事例などを地方の地域性を交えながら紹介する連載がスタート。第1回は島根県が推進する「ITしまね開業支援事業」をお届けする。

» 2017年10月27日 12時00分 公開
[MONOist]

イノベーションの概要

 「ITしまね開業支援事業」は、島根県が2015年度から推し進めている企業立地支援事業。島根県に移住し、個人事業者としてIT関連の事業に取り組む人をさまざまなかたちで支援する。特にスタートアップの支援に力を入れており、事業所の家賃、通信費、オフィス機器使用料、都市部への出張経費などに対する補助を実施。また、事業規模拡大による新たな従業員の雇用経費などに対しても補助を行っている。

 こうした支援に関心のあるエンジニア向けに、現地で実際に仕事や生活環境、行政のサポート体制などを知ってもらうためのトライアルイベント「ITしまね開業支援体験ツアー」を実施。2015年度は島根県の北部にある隠岐諸島(海士町と隠岐の島町)、2016年度は島根県の西部にある鹿足郡(吉賀町と津和野町)で行われ、今年度(2017年度)は島根県の東部にある奥出雲町(実施期間〜2017年11月まで)と雲南市(同〜2018年2月まで)で実施している。これまて24人がツアーに参加し、実際に6人が移住し開業に至っているという。

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 今回、この体験ツアーの支援に名乗りを上げたのが、ビジネスSNS「Wantedly」を手掛けるウォンテッドリーだ。同社は2017年10月3日に、ITしまね開業支援体験ツアーへの支援開始を発表。奥出雲町と雲南市での同ツアー募集ページをWantedlyで掲載し、集客の支援を行っている。人材採用の新潮流としてスタートアップを中心に人気を集めているWantedlyだが、首都圏中心だった企業・団体とビジネスパーソンとのマッチングサービスのニーズが、近年は地方企業や自治体での利用例も増加。特にIT人材が地方で不足していることから、地方で働くIT人材を増やすことに貢献していくという狙いが今回の取り組みの背景にあるという。

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イノベーションの地域性〜島根といえば……

 島根県といえばまず思い浮かぶのが「出雲大社」。大国主大神(おおくにぬしのおおかみ)を祭る“縁結びの神様”として知られている。その他では日本一のシジミ産地として有名な「宍道湖」、2007年にユネスコの世界遺産に登録された「石見銀山遺跡」、現存する唯一の政党天守閣といわれる「松江城」など、壮大な歴史や自然の感じられる名所旧跡がある一方で、県の人口は68万4868人(2017年9月)で47都道府県中46位と全国で2番目に少なく、県全域で過疎化が進んでいる。

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 近年は“活力のある地方の先進県”を目指して産業の振興に県を挙げて力を入れており、特に2007年から開始したIT産業への支援施策は、IT産業売上高とIT従事者数をそれぞれ2倍に拡大。さらに県外からのIT従事者数が5倍以上となるなど10年を経過して確実に成果を生み出している。

ここに注目! 編集部の視点

 編集部が注目するのは、島根県がオープンソースのプログラミング言語「Ruby」発祥の地だということ。松江市出身の“Rubyの生みの親”まつもとゆきひろ氏が今なお地元を拠点に活動していることや、県によるIT産業への支援施策も後押しし、Ruby関連の企業や人材が島根県に集まってきている。オブジェクト指向のスクリプト言語であるRubyは、シンプルな文法などによって分かりやすいプログラミングができるため、ソフトウェア開発の生産性を高める効果が特長だ。2012年にはRubyの長所はそのままに、よりコンパクトな構造に軽量化・最適化した組み込み機器向け「mruby」が登場。2017年初頭にはプログラム実行時の必要メモリ量を少なくした小型端末向け「mruby/c」をリリースするなど、時代のニーズに合わせて今も進化を続けている。mruby/cはセンサネットワークやウェアラブル端末向けの開発言語として期待されており、IoT時代での新しいモノづくりプラットフォームへの注目は高い。

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