日本で全く話題にならないLPWAがある。2G技術のGSMをベースとする「EC-GSM-IoT」だ。ただし、3Gの普及もままならないアフリカや南米などの開発途上国では、EC-GSM-IoTがIoTの通信を担う可能性が高い。
マイクロソフト、グーグルと2回ほどIoT向けクラウドサービスの話を続けたので、またちょっと話をIoT向けの通信規格であるLPWA(Low Power Wide Area)ネットワークに戻したい。今回ご紹介するのはEC-GSM-IoT(Extended Coverage-GSM-IoT)である。
EC-GSM-IoTは日本では全く話題にならない。というのは日本にはこれを利用するためのインフラがないためだ。名前の通りGSMネットワークを使い、到達範囲を広げ、しかもIoT向けにした規格である。
規格はNB-IoTとかLTE Cat.M1と同じく3GPPが策定作業を行っており、主要な部分についてはRelease 13で仕様の策定作業が完了している。もっとも、全部というわけではなく、幾つかの拡張部分に関しては2017年7月……というか、今月中に策定作業が終わる予定のRelease 14に含まれることになっている。
このEC-GSM-IoTは、もともとはエリクソン(Ericsson)が提案したEC-GSM(Extended Coverage for GSM)という規格であり、ノキア(Nokia)が提案したN-GSM(NarrowBand GSM)と比較した上で、EC-GSMベースで仕様策定が行われることになった。
さて、そのLTE Cat.M1とNB-IoT、それとEC-GSM-IoTの特徴を比較したのが図1である。
EC-GSM-IoTの特徴をざっとまとめると以下のようになる。
基本的には既存のGSMなりEDGEの音声チャネルをそのまま流用してIoT向けの通信規格を策定したもので、あまり新技術は搭載されていない。例外はext.I-DRXで、これはLTC Cat.M1に追加されたeDRXと同じ仕組みである。もっとも、I-DRXは最長52分程度となっている。
他に新機能としてはセキュリティの拡張(保護機能の統合、相互認証機能、暗号化アルゴリズムの強化)とか、極めて低速で通信するためのタイマー拡張、SGSNモードで通信頻度を下げるためにカバレッジを保存しておく仕組み、省電力のために近隣の通信セルのモニタリング頻度を下げるRelaxed Idle Modeの導入、といった項目が挙げられている。これらはいずれもLTEで導入された技術を転用した形である。当然基地局側もこれに対応する必要はあるのだが、その難易度はそう高くないとされている。
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