オートデスクは同社が研究中である新モデリング技術のジェネレーティブデザイン(自己生成的デザイン)について、概要やパートナーとの開発事例について紹介した。同社の新しいオフィスのレイアウト検討でも、研究の一環としてジェネレーティブデザインを利用した。IoTの仕組みで取得したビッグデータも活用できるよう研究中だという。
オートデスクは2017年7月20日、同社が研究中である新モデリング技術のジェネレーティブデザイン(自己生成的デザイン)に関する記者説明会を開催した。同技術は2014年12月に米国ラスベガスで発表して以来、同機能の増強や追加を図ってきた。今回はオートデスク 主席サイエンティスト、デザイン リサーチのマイケル バーギン氏が、その概要や今後について紹介した。
同社が研究に取り組むジェネレーティブデザインはトポロジー(位相)最適化の他、3つの自己生成的なモデリング手法がある。
Trabecular structuresは同社が2014年に買収したWithin Techの技術だ。まるで生物の骨のように、内部構造に多孔質(ポーラス)で細やかなラティス構造を生成(Porous random latticing)する。もともとはインプラント用の人工骨を3Dプリントするためのデザインツールの技術であったものを応用している。
トポロジー最適化はあらかじめ存在する形状を基にして、肉が削がれる形で最適な形状が生成されていくが、Form Synthesisは形状が存在しない状態から、固定部位や荷重やなどの条件定義から形状が生成される。
3D プリント ソフトウェア「Autodesk Netfabb」には、トポロジー最適化とラティス格子構造生成が実装されている。2017年中には、「Autodesk Netfabb Ultimate」で、テクニカルプレビュー(評価版)として、現時点では未採用の手法の一部が試せるようになる予定だ。
オートデスクの3D CADの「Autodesk Inventor」および「Autodesk Fusion 360」ではトポロジー最適化の実装にとどまっている。今後の製品で、他の自己生成デザイン技術も取り入れられていく予定だ。
さまざまなベンダーの3D CADで実装され始めているトポロジー最適化だが、オートデスクの技術の特長について、バーギン氏は以下を挙げた。
ジェネレーティブデザインは、製造や部品設計だけではなく、建築設計分野でも応用が可能だという。同社が新設したカナダ オンタリオ州 トロントのオフィスは、ジェネレーティブデザインを用いてデザインした。まずスタッフからオフィスへの要望などを聞き取ってから、採光、視野を妨げる要因、席から見える景色、席のそばにあるモノ、エネルギー消費、働き方、音響、人の密度などを考慮して、スタッフの導線を分析し、最適なレイアウトを導き出したという。この取り組みを今後は実践に生かしていけるよう研究を進めているとのことだ。
同社では、さまざまなセンサーから取得したビッグデータをジェネレーティブデザインで生かすといった、IoT(モノのインターネット)的なデザイン機能も検討している。「生活の中でセンサーがありとあらゆるところに使われている。そこから取得した大量のデータを用いてジェネレーティブデザインに活用し、より良いものが作り出せると考える」(バーギン氏)。
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