医療産業全体のサイバーおよびフィジカルの両面にわたるセキュリティ対策については、2016年5月に国土安全保障省(DHS)が「医療・公衆衛生セクター向け計画」(関連情報、PDFファイル)を公表している。図2は、DHSが示した医療/公衆衛生セクター向けのリスクベースアプローチであり、リスクの特定、脆弱性の削減、インパクトの低減、レジリエンスの強化という一連の流れに基づく包括的/統合的な手法を特徴としている。
HHSのタスクフォースは、DHSの医療/公衆衛生分野計画を踏まえ、サイバーフィジカルな重要インフラとしての医療セキュリティ対策に落とし込む形で、医療産業全体の組織的構造について整理している。図3は、タスクフォースが想定する医療エコシステムの全体像を示しており、直接患者ケア、検査/血液/医薬品、医療材料、医療IT、大規模犠牲者管理サービス、健康保険プラン/支払者、公衆衛生、連邦政府対応/プログラム部局から構成される。
この中で医療機器は、医療材料のカテゴリーに含まれる。本連載第25回で取り上げた、米国NISTによる無線輸血ポンプのセキュリティガイドライン草案でも分かるように、今後は、医療機器本体の製造物責任だけでなく、その背後に広がる複雑なネットワーク全体のセキュリティリスク管理策における役割/責任分担が重要となる。そうなると、本連載第24回で取り上げた、患者データに関わる外部委託先としての責任も、医療機器企業にのしかかってくる。
なお、HHSのタスクフォースは、今後の検討課題として、以下のような点を挙げている。
折しも、2017年5月11日、米国大統領のドナルド・トランプ氏は、サイバーセキュリティに関する大統領令に署名した(関連情報)。大統領令では、HHSを含む連邦政府の各省庁や機関のトップがサイバーセキュリティの責任を負うことが明記され、各省庁や機関が作成する詳細な報告書と計画の要件も示された(関連情報)。今回のタスクフォースの報告書を踏まえ、保健医療行政機関がどのような取り組み方針をホワイトハウスに報告するかが注目される。
笹原英司(ささはら えいじ)(NPO法人ヘルスケアクラウド研究会・理事)
宮崎県出身。千葉大学大学院医学薬学府博士課程修了(医薬学博士)。デジタルマーケティング全般(B2B/B2C)および健康医療/介護福祉/ライフサイエンス業界のガバナンス/リスク/コンプライアンス関連調査研究/コンサルティング実績を有し、クラウドセキュリティアライアンス、在日米国商工会議所等でビッグデータのセキュリティに関する啓発活動を行っている。
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