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» 2017年05月01日 10時00分 公開

「インダストリー4.0の本質はCPS、その手段がIoT」リコーの実践現場から製造業IoT(2/4 ページ)

[小林由美,MONOist]

やっていたつもりでも、やっていなかったこと

 佐藤氏はCPSについて、このように定義する。

「現実の世界からデジタルの世界の間をIoTでつなぎ、現実の世界のデータをデジタルの世界の中でマッピングする。さらにデジタルの世界でシミュレーションやビッグデータ分析、統計での予測手法、最適化などを活用して、現実に起こっていることが何なのか正確に理解する。その結果を現実世界にフィードバックする。そうしていくことで、現場におけるさまざまな問題を最適な手段で解決していく、あるいは仕事を変える」(佐藤氏)

 次に、佐藤氏はIoTとビッグデータの定義を明らかにした。

 「IoTとは、インターネットにつながるデバイスから、ビジネスに必要なデータを集めることであって、そのデータを解析することで意味がある知見を発見することである。IoTで使って集めるデータは、必然的にビッグデータとなる」(佐藤氏)。

 CPSを使うことで現実世界だけでは見えなかったことが明らかになることで、同じような過ちを繰り返さないようにしたり、人が介在していた作業を自動化したりすることが可能となる。また、情報共有において地理的、物理的な制約がなくなることもその利点として挙げた。

 インダストリー4.0はセキュリティという項目が非常に大きく、それはマルウェアの攻撃への対策の話とは限らず、情報の開示範囲のコントロールをすることで無用なノウハウ流出を防ぐところにも意味があると佐藤氏は述べた。

日本がお手本、シーメンスのアンベルク工場のインダストリー4.0とは

 インダストリー4.0の実践で先端を行く事例の1つとして、佐藤氏はシーメンスのアンベルク工場を挙げた。従業員数が約5000人だという同工場では、PLCやその周辺装置、スイッチ、ブレーカー、回路ボードを生産している。そのインダストリー4.0による最新鋭の設備や取り組みを目の当たりにしようと、世界から多くの人が殺到し、「見学は今申し込んでも、1年先になる」(佐藤氏)という状況だ。

 工場や設備、輸送機器などの自動制御をつかさどるPLCにおいては、まず「絶対にトラブルを起こさない」ことが重要である。また製品の仕様は顧客の要望によって多岐にわたり、多品種を短納期で顧客に提供して市場における競争力を高めること求められる。

 佐藤氏は上記に対応する同工場のインダストリー4.0のポイントとして、生産における高品質の追求、マスカスタマイゼーション、日単位で決定する生産計画の3つを挙げた。

 同工場では過去26年間において従業員数がほぼ同数であるにもかかわらず、同年比で現在は生産台数は10倍、製品品種数は5倍にまで伸ばした。現在、同工場では1日当たり120品目を生産している。総品種数は1000以上。注文に応じて、生産中には段取り替えが1日当たり350カ所ほど実施されているという。

 製品品質については、26年前が550dpm(100万台当たり550台のエラー)だったことに対して、現在は11dpm(100万台当たり11台のエラー)まで向上している。品質改善については日本の改善(kaizen)活動を模倣している。同工場内では「ポカよけ(pokayoke)」「自動化(jidoka)」といった言葉をそのまま使用している。品質は工場内の400カ所以上あるポイントでチェックされる。

 その日の生産計画数はその日の朝に決定される。顧客からの注文はインターネット経由で受け、自動化されたプロセスで全て処理される。前日の注文が翌朝の生産計画に反映される。そして99.5%の製品は24時間以内に出荷される。

 同工場の生産プロセスはモニターされ、記録され続けている。現在は、オンラインチェックポイント、スキャナー、装置などからデータ収集している。データ数は年々、2倍弱ほどのスピードで増えており、1995年は5000データ、2000年は5万データ、2015年には5000万データまで収集可能になった。約20年かけて、ようやくビッグデータと呼べるほどの量を収集できるようになったということだ。

 自動化率は現在75%程度であり、これ以上の自動化をすると、かえってコストアップや効率の悪化につながるという。部品の移送時間やコストは完全自動で求め、最適化を図っている。倉庫の部品は30分以内にラインに届く。ラインの長さは3000mであるが、ランプからラインまでが40m以内になるよう最適化している。

 仕入れ先のアセスメントや、品質やデリバリーに関する合意の形成を積極的に行っている。また同時に仕入れ先の企業の育成も実施しているという。

アンベルク工場からの学び

 佐藤氏はアンベルク工場の取り組みから学べることとして、モノづくりの本質は「顧客が求めるものを早く、安く、高い品質で作る」ことであって昔と何ら変わっていないことと、「どうしてスマートな工場になるのか、何でスマートになるのか」を明確にしていること、ビッグデータを収集するにはやはりそれなりに時間がかかって大変だということを挙げた。

 「インダストリー4.0を実践しようというときに、まず自社のビジネスを強くするための課題を明確化する。それを達成するためのCPSは何かを考える。そしてデータを徹底的に収集すること。とにかく早くデータ収集を始めた方がいい。どんなデータが必要かはやってみないと分からないところがある」(佐藤氏)。

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