インテルがスマートホームに取り組む背景には、PCなどの機器に搭載されるデバイスを販売していく事業モデルから、IoTなどから得られるデータを中心に、そのデータから価値を生み出すソリューション(デバイスを含む)を展開する「データカンパニー」に変貌していきたいという考え方がある(関連記事:インテルは「データカンパニー」になれるのか、5Gモデムの成功がカギに)。同社社長の江田麻季子氏は「これからのデジタル時代、データが新しい通貨のように価値を生む。当社がデジタルビジネスにコミットしていく中で、スマートホームも重要な分野の1つとみている」と語る。
またインテル 執行役員 インダストリー事業本部 アジアパシフィック・ジャパン エネルギー事業統括の張磊氏は「スマートホームの価値は、人々の本当のニーズを応えることにある。現時点でのスマートホームは、ユーザーが自由にサービスを選ぶようになっていない。今回の実証実験はその実現に向けた第一歩になると考えている」と説明する。
関西電力 理事 お客さま本部 副本部長 有吉猛氏は「2015年から開始した、はぴeみる電は203万人の会員がおり、国内の他の電力会社と比べて先行できている。この顧客基盤とインテルの技術を連携することでIoTの知見を得て、今後のサービス向上につなげたい」と意気込む。
Kii社長の鈴木尚志氏は「当社のIoTクラウドプラットフォームは、一般的なIaaSと異なり既にアプリケーションを用意している。これをカスタマイズするだけで容易にIoTサービスを展開していただけると考えている」と説明する。
今回の実証実験では、関西電力、Kii、ぷらっとホームの得られるメリットは明確だ。関西電力は顧客サービスの充実、KiiはIoTクラウドプラットフォームの採用拡大、ぷらっとホームはゲートウェイの拡販につなげられる。
インテルは、実証実験の枠組みを“スマートホーム向けIoTプラットフォーム”として販売することはない。ゲートウェイや環境センサーに搭載されているデバイスの市場拡大が直接的なメリットになるが、これは将来的なものだ。
それでもインテルが実証実験を主導するのは、IoTivityというオープンなプラットフォームをスマートホームで広く利用してもらうための素地作りが大きな理由になっている。グーグル(Google)が、Androidをオープン化することによってスマートフォン市場で高いシェアを得たように、自らの手でスマートホーム市場の流れを新たに作り出す。そして、その新たな市場のデータ流通に関わるデバイスの市場が立ち上げて、インテルの事業拡大につなげるという寸法だ。
ただしスマートホームのゲートウェイとしては、既に「Amazon Echo」が大きな存在感を見せつつある。インテルの取り組みが一定の成功を収めるには、今回の実証実験を含めて、IoTivityの採用をどれだけ早期に広げられるかが鍵になりそうだ。
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