矢面氏は引き続き、グーチョキパーツでIoTの活用をどうするかということについて、さまざまな方向で奮闘しているようです。今回は将来像をどう描くかということで悩みがあるようです。
印出さん、こんにちは。また困っていることがあるんです。
矢面さん、こんにちは。どうしたの?
今、グーチョキパーツでIoT活用を進めようとしているんですが、社長から『例えば、工場はいいとして、その後はどこまでやればいいんだ』とか言われてしまって。悩んじゃったんです。
なるほど。確かに、IoTの活用を社内の効率化だけで留めるのか、自社のビジネスモデル変革にまで使うのか、で技術や変えなければならない組織体制なども変わってくるわね。
そうなんですよ。そもそも「IoTで装置からデータとって改善しましょう」だと理解しやすいですけど、「組織を変えて〜」みたいな話はイメージわかないんです。
そうね。そういう場合に良いものがあるわ。「リファレンスアーキテクチャ(参照モデル)」よ。
リファレンスアーキテクチャモデルは、「参照モデル」とも言われており、さまざまな要件を内包しつつ全体の構造を模式的に示したものです。第4次産業革命におけるリファレンスアーキテクチャモデルとしては、何よりもドイツの「Reference Architecture Model Industrie 4.0(RAMI4.0)」が先駆的な存在です。
本連載の第3回「なぜドイツはインダストリー4.0を生み出す必要があったの?」では、ドイツがインダストリー4.0を生み出す経緯について、説明しましたが、ドイツではこの「RAMI4.0」をEUのスマートグリッドアーキテクチャモデル(SGAM)を踏襲して生み出しました。
立方体の鉛直方向はバリューネットワーク全体の「論理的なレイヤー構成」を示しており、ビジネス層からアセット層まで6層で構成されています。立方体の左辺は「製品のライフサイクル」もしくは工程、立方体の右辺は「生産システム全体の物理的な構成」という形で構成されています。
ドイツではこのRAMI4.0をスマートファクトリーの標準化の土台にしようと国際標準化団体に働きかけを行っており、第4次産業革命およびスマートファクトリーなどの動きの中で、土台とされているのが「RAMI4.0」ということになります。
「RAMI4.0」で描くモデルそのものへの賛否があるのは事実だけど、詳細な議論の土台にするという意味では役立つわ。
リファレンスアーキテクチャモデルそのものは、抽象化された全体像であるため、現状ではこのモデルそのものが「標準」となるということはなさそうです。モデルそのものの捉え方や解釈などが、規格化するには幅が広すぎるためです。ただ、規格を策定する際の考え方の基礎や争点の洗い出しなどに利用されるということや、全体の構成などに組織の作り方などの考えが反映されることから、「RAMI4.0」を全ての土台として扱うことには、懸念する動きがあります。
こうした背景から、各団体がそれぞれのリファレンスアーキテクチャモデルを作る動きとなっているわけです。
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