IoTの活用が期待される自動車産業、新興国が再びけん引役にIHS Industrial IoT Insight(4)(3/4 ページ)

» 2017年03月06日 11時00分 公開

日本市場はIoT活用がカギに

 日本国内は、長期的にみて減少傾向であり、経済の低成長、少子高齢化、消費税のさらなる増税、自動車保有台数の将来的減少傾向、買い替えサイクルの長期化などがマイナス要因として挙げられる。軽自動車は、本来保有コストの安さや日本の道路事情に則した運転の取り回しの良さ、独自の商品性や女性にとっての使い勝手の良さなどが魅力のポイントであるが、2015年度以降軽自動車税増税の影響や、2016年度での一部燃費問題などで低迷中である。

 東京オリンピック・パラリンピックに向けて、燃料電池車や自動運転車など新たな技術の創出と普及への布石として、また高齢化社会の対策として、IoTを積極的に活用することが、安心・安全につながる社会への第一歩といえ、新たな付加価値を獲得する良い機会になり得る。

2018年以降も成長余地を残す中国市場

 新興国市場の代表である中国は、金利や物価水準も他の新興国と比べて比較的安定しているものの、住宅・不動産市況、株式市況、企業・政府の財政問題、製造部門の過剰生産能力などマイナスのリスクは残る。小排気量エンジン搭載車の購入税も2016年の5%から2017年の7.5%と実質引き上げになったが、対象車両の自動車購入税減税措置の延長とディーラーやメーカーからの積極的な販売活動により補われている格好だ。減税政策が年内いっぱいまで有効化されることで、経済鈍化が懸念される割には自動車市場へのプラスの影響が継続するとみられる。

 一方で2018年は反動減が見込まれる。しかし、基本的には中長期における中西部を中心とした内陸部からの経済成長を背景とした需要の拡大や、中央政府による景気浮揚策、さらには第三次産業の発展などが新たな経済成長のけん引役になるとみている。2020年にはライトビークル車両の新車販売ベースで3千万台超に達する見込みとなっている。

インドは2020年に日本を超える市場に

 インドは、中国やASEAN諸国と比較しても人口構成が若く、豊富な労働力が経済成長の底上げ要因となっている。政治の安定に加えて、規制緩和や新規工場の立ち上げ、設備投資の拡大、道路・港湾・鉄道などに対する政府投資事業の拡大などインフラプロジェクトの展開によって雇用が創出され、経済は堅調に推移するとみられ、金利の引き下げなどにより今後の成長が期待できる市場の1つだ。

 ただし、モディ政権による不正資金(使途不明金や課税逃れ)炙り出しのための高額紙幣廃止の実施が短期的な流動性低下を招いたことで景況感は一時的に損なわれた。高額紙幣の不足により、新車購入を保留することが見込まれるが、都市部での商取引は電子化に移行する可能性があり、生産性と効率性が高まることで長期的にはポジティブな影響となるであろう。また年度ごとの予算に景気刺激策が盛り込まれれば、消費者へのプラスの材料となることが期待される。2020年には日本の国内需要を上回る一大市場へと成長していくことが見込まれ、さらにその10年後の2030年には日本販売市場の約2倍の規模へとさらに拡大することが予測されている。

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