PTCは、2017年12月をめどに、PLMツール「Windchill」の最新バージョン「Windchill 12」の開発を進める。その一方で、IoTプラットフォーム「ThingWorx」を基にWindchillなどで集約したさまざまな情報をより多くの技術者が活用できるようにするアプリプラットフォーム「PTC Navigate」の開発を加速する方針だ。
PTCジャパンは2017年2月21日、東京都内で会見を開き、PLMビジネスの最新状況を説明した。2017年12月をめどに、PLMツール「Windchill」の最新バージョン「Windchill 12」の開発を進める一方で、IoTプラットフォーム「ThingWorx」を基にWindchillなどで集約したさまざまな情報をより多くの技術者が活用できるようにするアプリプラットフォーム「PTC Navigate」の開発を加速する方針だ。
米国本社PTC PLM/ALMセグメント ディビジョナル バイスプレジデント兼ゼネラルマネージャのケビン・レン(Kevin Wrenn)氏は「PLM市場は業種にかかわらず一貫した成長が見込まれている。IoT(モノのインターネット)をはじめとするデジタル化のトレンドの中でPLMの役割はより重要になっていく。これまでのPLMは、設計部門が使うというイメージが強かったが、今後は企業の全社的連携の中で、PLMで管理するデジタルデータも自由に扱えるようにしなければならない。そしてPLMのクラウド化も着実に進んでいる」と語る。
PTCは、デジタル化が進行する中で「デジタルエンジニアリングトランスフォーメーション」の推進に貢献する製品開発を進めている。その道のりは「現状把握(Understand)」「差別化(Advance)」「新たな価値の提供(Outperform)」という3つのステージに分かれる。
「現状把握」を実現する手段の1つである「ユニバーサルデータアクセス」を具体化した製品が、PTC Navigateだ。2016年1月にデータ閲覧に特化した「PTC Navigate View」のバージョン1.0を投入してから、その後も3〜4カ月に1回の頻度で改良しており、2017年2月時点ではバージョン1.4となっている。「既に10万ユーザー以上の販売を達成している」(レン氏)という。2017年中ごろには、閲覧したデータに「マークアップ」や「レビュー」「承認」といったユーザーから情報追加が可能な「PTC Navigate Contribute」を投入する予定だ。
Windchill 12は、「差別化」を実現する機能を入れ込む形で開発が進められている。ALMツール「Integrity」、データ分析や機械学習のツール「Cold Light」との機能統合を進める他、AR(拡張現実)やVR(仮想現実)を使ったデザインレビューを行えるようにする機能などを用意している。
「新たな価値の提供」では、実世界の製品を設計データやIoTで取得したデータから作り出す「デジタルツイン」の運用に向けた機能「アセットの構成管理」の開発を進めている。レン氏は「メンテナンスBOMとも呼ばれているもので、これによりデジタルツインを活用したライフサイクル管理や、予測型データ解析による現在と将来の製品改善などが可能になる」と説明する。
PLMであるWindchillと、PLMの情報を活用するPTC Navigateの違いは言葉だけで説明しても分かりやすいとは言い難い。レン氏は、その違いを分かりやすく図で示した。PTCの従来製品である、WindchillやIntegrity、3D CAD「Creo」、SLMツール「Sevigistics」などは情報を記録する「記録システム」だ。記録システムには、競合他社の3D CAD、PLM、ALM、SLMや、CRM、ERPといったエンタープライズITシステム、MESなどの生産管理システムなども含まれる。
一方、PTC NavigateなどのThingWorxベースの製品群は、記録システムの情報をさまざまなユーザーに提供するための「エンゲージメントシステム」になる。つまり、PTC Navigateは、Windchill以外のPLMの情報を扱うことも可能な仕様になっている。「PTCから提供する基本機能ではWindchillとの連携が前提になっているが、パートナー企業が顧客の要望に合わせて『Teamcenter』や『ENOVIA』からの情報も取得できるようなアダプターを開発するなど、PTC製品にとどまらない幅広い情報活用が可能になっている」(レン氏)という。
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