2020年に向けて、高速動作が可能な協働ロボットが新規導入されるロボットの30%を占め、物流や医療などの非製造業の主要企業の35%がロボットの活用を検証し始める。一方で、人材不足や雇用維持をにらんだロボットの導入規制も導入されそうだ。
IDC Japanは2017年2月9日、2017年以降のロボティクス関連の世界市場で起こる予測10項目を発表した。
同社によると、高速動作が可能な協働ロボットが新規導入されるロボットの30%を占め、物流や医療などの非製造業の主要企業の35%がロボットの活用を検証し始めるという。一方で、人材不足や雇用維持をにらんだロボットの導入規制も予測する。「産業リーダーのロボットに対する考え方の違いが成長できるかどうかの分かれ目になる」(IDC)としている。
IDC Manufacturing Insights ロボティクスリサーチディレクターのジン・ビン・チャン氏は、2017年から2020年の進展を特徴づける要素や企業の動きを以下の10項目にまとめた。世界8地域で13業種を対象に調査を行った。
まず、2018年までに新規導入されるロボットの30%が、既存のロボットの3倍の速度で動作する協働ロボットとなる。協働作業はまだ一般的ではないが、安全性向上が普及を後押しするとしている。2019年には、物流や医療、公共インフラなど工場の外でロボットの活用が進み、ロボットによる自動化の検証が活発に行われる。Eコマースやオムニチャネル企業の主要200社のうち、45%が倉庫内の受注処理や配送にロボティクスを採用すると見込んでいる。
こうしたロボットの普及を受けて、ロボット導入のサポートの市場規模は800億米ドル(約9兆400億円)に拡大し、新規参入企業も増加する見通しだ。企業から見ればベンダーの選択肢が増えることになる。また、ロボットの導入コスト削減のため、商用サービスロボットの30%は「Robot as a Service」の形で提供され、所有から利活用型に展開していくようになるという。
ロボティクス市場の拡大に対し、2019年ごろから各国政府はロボットの規制を導入し始める。雇用の維持やセキュリティ、安全、プライバシーの確保に対応するためだ。議論の段階ではあるが、ロボット導入に伴う追加課税などが欧州で検討されているという。
ロボット活用を重視する方針を反映し、主要企業の30%がロボティクス専任の責任者を配置するようになる。2020年にかけてはロボティクス分野の人材不足が進む。ロボティクス分野の人材は平均給与が最低でも60%増加するが、関連職の35%は人材が不足するという。ユーザーサイドだけでなくロボットメーカーでも人材が足りなくなる。ユーザーは、どのように導入して使うか、メンテナンスも行わなければならない。ロボットメーカーの方は、プログラミング、モーター制御など専門性の高い技術者が必要になる。遠隔操作によるメンテナンスやアップデートなどにも対応しなければならなくなる。
2020年までには、ロボットの60%はクラウドサービスを通じて新機能、認知能力や制御プログラムが提供されるようになる。ロボティクス関連のクラウドサービス市場も形成されていく。また同時期ごろに、ロボットの40%はメッシュネットワークに接続されて、最適化された稼働情報や機能情報がロボット同士で共有され、運用効率が200%改善すると見込まれている。
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