IoTが生み出す深さ、製造業は顧客のビジネス全体を支援する時代へMONOist IoT Forum 大阪(前編)(1/2 ページ)

MONOistを含むITmediaの産業向け5メディアは、セミナー「MONOist IoT Forum大阪 IoTがもたらす製造業の革新 〜進化する製品、サービス、工場のかたち〜」を開催。同セミナーのレポートを前後編に分けてお送りする。

» 2017年01月30日 13時00分 公開
[三島一孝MONOist]

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 MONOist、EE Times Japan、EDN Japan、スマートジャパン、TechFactoryの産業向け5メディアは2017年1月25日、大阪市でセミナー「MONOist IoT Forum大阪 IoTがもたらす製造業の革新 〜進化する製品、サービス、工場のかたち〜」を開催した。

 本稿では、前編で、ヤンマー 執行役員 経営企画ユニット ビジネスシステム部 部長の矢島孝應氏による基調講演と、オムロン インダストリアルオートメーションビジネスカンパニー 商品事業本部 企画室 拡業推進部長 本条智仁氏による特別講演を、後編で、ノキアソリューションズ&ネットワークス テクノロジー・ビジネス・ディベロップメント シニアマネージャー 小島浩氏の特別講演と、その他の講演についてお伝えする※)

※)関連特集:総力特集「IoTがもたらす製造業の革新」

バックヤードとなるIT基盤を強化

 基調講演で登壇したのは、IoTを活用した農業機械(農機)などを展開する、ヤンマー 執行役員 経営企画ユニット ビジネスシステム部 部長 矢島孝應氏である。矢島氏は松下電器産業(現パナソニック)に入社後、一環して情報システム部門を中心に経歴を重ね、2013年にヤンマーに入社。ビジネスシステム部長としてICT革新を推進してきた。

photo ヤンマー 執行役員 経営企画ユニット ビジネスシステム部 部長 矢島孝應氏

 ヤンマーでは、地域にばらつきのあるブランド力向上を目指し、2012年の創業100周年を機に「YANMAR PREMIUM BLAND PROJECT」を推進。アートディレクターの佐藤可士和氏やプロダクトデザイナーの奥山清行氏などを起用し、デザインを軸にグローバルブランドとしての統一価値の訴求を目指してきた。「次の100年へ」をキーワードとした、最適なコミュニケーションの構築に向けた取り組みであるが、「社内の仕事、オペレーションもプレミアムでないといけない」(矢島氏)とし、本質的な価値の向上に向けた取り組みの1つとして、IT活用の強化を推進する。

 矢島氏は「経営と現場、ITの三位一体での取り組みが必要」と強調する。ヤンマーの2020年に向けた経営課題としては、「グローバル化推進」「顧客接点とサービス強化」「技術力、開発力、商品力のさらなる強化」「事業再編、M&Aへの変化対応力の確保」「コンプライアンスの強化」の5つを挙げる。「これらを実現するためのIT基盤の整備を推進してきた。効率化のITと、売上高を作るITを両立させる必要がある」と矢島氏は述べている。具体的には、3次元CAD活用の拡大やリモートサポートセンターの運用開始、コミュニケーション基盤の導入などを実現する。

IoTを活用した新たな農機ビジネス

 これらの基盤整備に加えて、売上高を拡大するITとして、ヤンマーが展開するのが「SMART ASSIST(スマートアシスト)」である。スマートアシストはIoTを活用した農機見守りサービスだ。各農機にSIMカードを装着して通信することにより、1分単位の稼働状況の見える化を実現。さらにGPS情報を基に設定区域外から出たときに警報を出す盗難防止などの機能も備えている。「農機の価格は高級車並みで、実は盗難に遭いやすいこともあって、盗難防止機能は好評だ。既に数十件もこのサービスを通じて犯人を捕まえたことがある」と矢島氏は語る。

 顧客に提供した機械の状況が把握できることで、メンテナンスなども容易になる。「従来の農機のメンテナンスはタイムベースメンテナンス(定期検診など)となっていたが、稼働時間ベースのメンテナンスに切り替えることが可能となる。さらに最終的にはコンディションベースメンテナンスに切り替えていくことを考えている」と矢島氏は述べている。

 IoTを活用した農業の変革について、「現状ではヤンマーの農機のサプライチェーンの中での新たな付加価値という形だが、農機を通じて顧客の活動全てが見えるようになる。そのため、顧客のサプライチェーン全てをカバーしてサポートしていくようなフェーズに変わってくると見ている。こうした領域にどうアプローチしていくのかを考えていく」と矢島氏は今後のビジョンについて語る。

 これらを体現する例として開発したのが「ロボットトラクター」である。「これはトラクターの自動走行を実現するものだ。現状では1人が1台を運転して、もう1台が人が運転するトラクターの動きを追従し、2つの作業を同時に行えるような仕組みを考えている。近々発売する予定だ」と述べている。さらに今後は農地造成や農業工程の改善などを実現するような取り組みも推進。ドローン(無人航空機)を飛ばして画像を撮影し、コニカミノルタの画像診断技術を生かして、農作業に対する単位あたりの収量などを管理できる仕組みづくりに取り組む。「農作業の改善活動をデータの裏付けで実現できるようにする」(矢島氏)。

photo ヤンマーの「ロボットトラクター」

 さらに今後は「例えば、機器からデータを取得できない手作業の部分をどう支援していくのかという課題がある。これらに対しては、ウェアラブル端末やスマートグラスなどを活用することも考えていく。また最終的に顧客のビジネスを支えることを考えると、販売まで一緒にやる方向に進めていきたい」と矢島氏は今後の抱負を述べている※)

※)関連記事:“次の100年の礎”に、ヤンマーのIoT戦略は「B2B2M2C」

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