ヤンマーは、農機の見守りサービス「SMARTASSIST」や自動運転トラクター「ロボトラ」をはじめ、農機のIoT(モノのインターネット)活用に積極的に取り組んでいる。同社のCIO(最高情報責任者)として、農機のIoT活用をはじめさまざまなIT戦略を推進している矢島孝應氏に話を聞いた。
製造業のIoT(モノのインターネット)活用事例の代表として挙げられるものの中に農業機械(農機)がある。農機に通信機能を持たせてIoTとすることによって、農作業の効率を大きく高められるからだ。農機大手のヤンマーも、農機の見守りサービス「SMARTASSIST(スマートアシスト)」や自動運転トラクター「ロボトラ」をはじめ、農機のIoT活用に積極的に取り組んでいる。
これらの取り組みは、ヤンマーが2012年に創立100周年を迎え、“次の100年に向けて”2013年から開始したさまざまなプロジェクトが契機になっている。その2013年に入社し、同社のCIO(最高情報責任者)として、農機のIoT活用をはじめさまざまなIT戦略を推進している、執行役員 経営企画ユニット ビジネスシステム部 部長の矢島孝應氏に話を聞いた。
ITmedia産業5メディア総力特集「IoTがもたらす製造業の革新」のメイン企画として本連載「製造業×IoT キーマンインタビュー」を実施しています。キーマンたちがどのようにIoTを捉え、どのような取り組みを進めているかを示すことで、共通項や違いを示し、製造業への指針をあぶり出します。
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MONOist まず、どのようないきさつでヤンマーに入社されたのか教えてください。
矢島氏 松下電器産業時代から長らくパナソニックで情報システム部門を担当した後、3年半ほど三洋電機でCIOを担当した。その後、ヤンマーから、ITを中心とした取り組みで「次の100年の礎を作ってほしい」という声をかけてもらったのが入社のきっかけになる。
MONOist パナソニックや三洋電機など電機業界を長く経験されていましたが、農機やディーゼルエンジンなどを中心とするヤンマーのことはどこまでご存じだったのでしょうか。
矢島氏 正直言えば入社前の時点では「ヤン坊マー坊」のイメージしかなかった。しかし実際には、誇るべき技術やさまざまな実績がある。それは主力事業の農機だけにとどまらない。例えば、小型エンジン事業は社内利用が27%にすぎず、残りは社外に販売するなど高い評価を得ている。南極の昭和基地もヤンマーのエンジンで動いているし、大型船の補機エンジンも高シェアだ。データセンターの発電機用エンジンでも高い実績がある。
だが、それらのことは世間にほとんど知られていないのが実情だった。そこで、2013年からブランド向上を目指す「プレミアムブランドプロジェクト」が始まった。同プロジェクトに携わっているデザイナーの佐藤可士和氏からも「確かに素晴らしい技術と実績だが、知られていないということは存在しないのと同じ」と言われた。
当時、世間の人が目を触れない工作機械もかっこいいデザインを採用するようになっていた(関連記事:なぜ日本のドラマの町工場は、暗くて、汚くて、貧しいのか)。であれば、まずはヤンマーの主力製品である農機のデザインも良くしよう、ということでデザインしたのが、工業デザイナーの奥山清行氏が担当した次世代トラクターのコンセプトモデル「YT01」だ。YT01は高い評価をいただき、農機以外のさまざまな業界からも注目を集めた。実際に、量産化製品である「YT3シリーズ」は「2016年度 グッドデザイン金賞」も受賞している。
商品力、技術は素晴らしい。デザインも良くなった。であれば、次に必要なのは顧客へのサービス向上だ。私がCIOとしての取り組んだことの最大の目的は、この「顧客へのサービス向上」になる。
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