“光のプロ”の遊び心が産んだ反射率99%ミラー――吉城光科学オンリーワン技術×MONOist転職(7)(2/3 ページ)

» 2017年01月04日 10時00分 公開
[杉本恭子MONOist]

一貫生産を実現した初の会社

 同社は、板ガラスの加工、研磨、蒸着の全てを自社で行う、一貫生産を初めて実現した会社でもある。加工、研磨、蒸着はそれぞれ専業であることが一般的。特に蒸着はクリーンルームで行われるような化学的処理であり、研磨とは質も設備もまったく異なる仕事だ。代表取締役社長である吉田尚正氏は「品質を左右する重要な工程である研磨は、当社のルーツであり、自信を持っています。加えて一貫生産により、各社の要求に柔軟に対応することも、逆にこちらからコスト削減や納期短縮につながる提案をすることもできる。これが当社の一番の強みだと思います」という。

photo 同社社長の吉田尚正氏

 海外進出も早い。1993年、香港に事務所を設立して以降、中国広東省の東莞(1994年)、上海(1995年)、ベトナムのハノイ(2006年)と海外に3工場を設立し、いずれも日本と同様の一貫生産を行っている。1994年ごろは、経済特区に指定されている深センへの進出が目立った時代だが「みんなが進出しているところに行っても優位性がない」とあえて、当時はいわゆる「田舎」だった東莞を選んだ。納品先である各メーカーも同時期、あるいは後から進出し、「吉城光科学があるなら、安心して頼める」と海外での仕事が増加していったという。現在の従業員数は、日本は約90名、海外拠点の合計は1000名を越えている。

「自由研究」歓迎!

 吉城光科学は、技術者の遊び心を「自由研究」と呼び、ちょっとしたアイデアや好奇心を試してみることを許容、むしろ歓迎している。「われわれのような小さな会社では、専任の研究者を置くことはできませんから」と吉田氏は言うが、言いかえれば技術者全員が研究者でもあるということだ。例えば反射率99%のアルミニウム製超高反射ミラー(UHR)も、自由研究がきっかけで生まれたもの。技術者のアイデアを試すことができる社風が、同社ならではの技術につながっている。

photo スマートフォンの液晶保護シート「Switch Mirror(スイッチミラー)」

 社内のアイデアを活用して、初めてのコンシューマ製品となるスマートフォンの液晶保護シート「Switch Mirror(スイッチミラー)」も開発した。マジックミラーと同じ原理で、画面をOFFにすると液晶保護シートが鏡になるというもので、0.33ミリの薄板強化ガラスを使用。表面にはダイヤモンドコーティングを施しているので非常に割れにくい。2016年度のグッドデザイン賞も受賞し、現在オンラインのみで販売している。この製品を知った企業から、「この技術を別の製品で使えないか」という相談も持ちかけられているそうだ。

photo 画面をOFFにすると液晶保護シートが鏡になる(左)

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