機械メーカーで3D CAD運用や公差設計/解析を推進する筆者から見た製造業やメカ設計の現場とは。今回は「SOLIDWORKS WORLD JAPAN 2016」から聞こえてきた「イノベーション」と「IoT」という2つのキーワードについて考えた。
2016年11月8日に東京で開催されたソリッドワークス・ジャパン主催のイベント「SOLIDWORKS WORLD JAPAN 2016」に参加してきました。このイベントの特徴は、同社のSOLIDWORKS製品の情報発信だけではなく、「日本のSOLIDWORKSコミュニティーによる、コミュニティーのためのイベント」だということです。ここでいう「コミュニティー」とは、ソリッドワークスに関わる人の全てを指しています。ユーザー、販売店、関連製品メーカー、ソリッドワークス社員、製品群の全てを指していると私は理解しています。
私が所属する「ソリッドワークス・ジャパンユーザー会(通称SWJUG)」が、イベントの共催となっているのも、ソリッドワークスがこのコミュニティーを重要視している表れなのでしょう。同じくCAD/PLMベンダーであるPTCのイベント「PTC Forum Japan」でも「PTCジャパン・ユーザー会」が後援になっています。これが欧米系のCADメーカーの特徴でもあると私は考えています。
さて今回のイベントですが、その方向性を示す基調講演(key-note)のテーマとして「イノベーション」が挙げられ、「世界初の全自動洗濯物折りたたみ機ランドロイド(laundroid)とイノベーション戦略を学ぶ」と題してセブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズの代表取締役社長 阪根信一氏が登壇しました。
同社のランドロイドは、投入された洗濯物の種別を画像認識によって判別し、ロボットアームが折り畳み、かつそれを種類別に分別することができるという「洗濯物折り畳み機」です(関連記事:家庭の洗濯物“折り畳み”をロボット技術で自動化、2016年度内に予約開始)。
ランドロイドの開発に取り組む前、阪根氏は「世の中にないモノ」「人々の生活を豊かにするモノ」「技術的なハードルが高いモノ」という同社の3つの“クライテリア”を満たす開発テーマを模索する中、「今後はきっと、女性や子ども、年配の方に役立つモノが売れそうだ」と考えていたといいます。
世界初の全自動洗濯折りたたみ機は、阪根氏のご家庭での会話から始まったそうです。「週末に自宅にいて、妻と話をしていたら、『家の中で使うもので、今、世の中にあったらいいなというものはある?』と聞いたら、『そりゃ、折りたたみ機よ』と言われた」(阪根氏)ということです。
「どう考えても、極めて難しそう。さすがにこれは無理ではないか」(阪根氏)。私自身も、ランドロイドの報道を聞いた際には、「そんなの無理じゃないの」「できたらすごいね」が第一印象でした。
そんな、誰もが「それは無理だ」と思ってしまうようなことを、10年以上もの歳月をかけて極秘で開発し続けて実現したというストーリーに私は純粋に感動しました。
昨今、「イノベーティブ(innovative)」「イノベーション(innovation)」といった言葉をよく聞きます。このイベント中も、「イノベーション」という言葉がさかんに使用されていました。その正しい意味について、読者の皆さんはご存じでしょうか?
「世の中にないものを“開発する”“創造する”」というように私自身は思っていましたが……その意味は違うようです。このイノベーションという語句ですが、オーストリアの経済学者シュンペーター(Joseph A.Schumpeter)氏がその著書「経済発展の理論」の中で初めて定義したということです。
私は残念ながらその著書は読んでいませんが、文部科学省の「平成18年度科学技術白書」によれば、『「科学的発見や技術的発明を洞察力と融合し発展させ、新たな社会的価値や経済的価値を生み出す革新」とイノベーションを定義付けている』と解説しています。
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