京都大学は、社会隔離ストレスが不安増強を招く神経回路メカニズムをマウスで解明した。長期化する引きこもり状態の解消に貢献する成果であり、抗不安薬の開発や、不安を減らす認知行動療法の開発につながることが期待される。
京都大学は2016年11月24日、社会隔離ストレスが不安増強を招く神経回路メカニズムをマウスで解明したと発表した。同大学医学研究科の成宮周教授、長崎大学の出口雄一准教授らの研究グループによるもので、成果は同月23日、米科学誌「Cell Reports」に掲載された。
研究グループは、他のマウスから隔離して1匹で長期間飼育した社会隔離ストレスモデルマウスを作成。社会からの隔離により、不安が増強される脳機能メカニズムの解明をモデルマウスで試みた。
その結果、社会隔離ストレスモデルマウスは、脳内の側坐核から腹側被蓋野という部分に投射する神経伝達が抑制され不安が強くなることが分かった。さらに、神経伝達が抑制されるのは、投射神経細胞の神経終末において、タンパク質「mDia」が活性化され、シナプス前終末を収縮させてシナプス伝達効率の低下を引き起こすためであることを発見した。
内閣府が2016年に実施した調査では、引きこもり状態の人は日本国内の15歳から39歳の年代で推計54万1千人に上るという。引きこもり期間は7年以上が約35%と最も多く、社会からの隔絶によって不安が増強され、社会復帰が困難になることが長期化の原因の1つであると考えられている。
今回の研究成果は、長期化する引きこもり状態の解消に貢献するものだ。また、解明されたメカニズムを標的とした抗不安薬の開発や、不安を減らす認知行動療法の開発につながることが期待される。
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