スマートシティの守備範囲は街、家、インフラとかなり広い。商業ビルや公共施設の空調や照明の自立制御や、デジタルサイネージは既に普及が始まっているが、今後さらなる進展が見込まれる。
例えば、駅などで見掛けるサイネージ自販機では、従来の自販機で商品サンプルが並べられているのに替わって、電子ディスプレイに飲料ボトルの画像が表示される。機種によっては、中に設置したカメラが撮影した画像から自販機の前にいる人物の性別などの属性を判別するとともに、その日の気温や時間帯に応じてお薦め商品を表示する、といった機能がみられる。
こういった機能は広告として使われるだけではない。温度や画像センサーが取得したデータはクラウドに上げられ、ビッグデータとして分析されることで、気温や利用者の属性、時間帯に適した商品の投入、補充を無駄なく行うことが可能になり、欠品や売れ残りの低減につながる。
つまり、自販機が取得したデータは飲料メーカーのマーケティングやロジスティクスに対して経済価値を与えることになる。また、自販機に搭載されたカメラを活用することで、過疎地での見守りや治安の悪い地域での防犯に役立てようといった動きもある。これらは人口減少や都市化といった現代の日本が抱える社会問題への対策として注目されている。
スマートシティにおける家=スマートホームに関しては、スマートメーターの普及が進んでおり、各社による「スマート家電」の発表も増えている。一方、OSやプロトコルの標準化は途上段階にある。今や家電大国となった中国やプラットフォーム化に強い欧米に比べると、日本は「家の中」のスマート化は進みつつあるものの、家庭で使われるエネルギーを管理するシステムHEMS(Home Energy Management System、ヘムス)を中心とする製品展開のため、外とのつながりという点では後れを取っている。途上段階とはいえ、図3や図4のようなグローバルな青写真が見えてきたため、ロードマップとして押さえておきたい。
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