先駆者が語るIoT、「日本は強い製造業で世界と勝負すべき」製造業IoT(2/3 ページ)

» 2016年11月01日 15時00分 公開
[三島一孝MONOist]

IoTが抱える技術以外の課題

 一方で、IoTはそれぞれの産業に従来にない枠組みを生むため、既存のプロセスが変わることになる。既存のセグメントを越えたところに価値が生まれるが、一方で技術面以外で、規制や商習慣などが障壁になる可能性がある。

photo PFN 代表取締役社長 西川徹氏

 これらの技術以外の課題についてPFNの西川氏は「IoTは現実世界に動くデバイスを扱うため、実験場所を確保するのが大変だ」と苦労を述べる。PFNでは、トヨタ自動車と自動運転などについて共同実証を行ったり、ファナックと産業用ロボットの機械学習などについて実証を行ったりしている。

 CEATEC JAPAN 2016では、機械学習によるドローン(無人航空機)の自動操縦についてのデモを披露した※)が、「ドローンの実験場所がないことに苦労した。IoTではハードウェアとソフトウェアをすり合わせながら実証を進めていくことが重要だ。しかしハードウェアを自由に動かすことができなければ、正しいモデルを得ることができない。自由に実験できる場所をより多く提供することが重要だ」と述べている。

※)関連記事:ドローンが機械学習で自律飛行、“らせん学習”で進化

photo ソラコム 代表取締役社長 玉川憲氏

 一方でソラコムの玉川氏は「意識」の問題を挙げる。「特に日本は新しい技術の許容度に課題があると感じている。新たな技術をいち早く取り入れて競争力につなげようという姿勢がなく、事例ばかりを求めている。事例があるということは競争力で考えた場合、勝つことはできない。そういう意味ではリスクを取ってでも新しいことをやる、目利きができて実践できる人をつかむことが大事だ」と玉川氏は「人」の重要性を訴えている。

 さらに玉川氏は「キラーアプリケーションが必要になる。最終的にはトレードオフの関係になるので、どういうリスクがある一方でどういう価値を提示できるかということが全てだと考えている。コンソーシアムのような標準化の前段階でグローバルで連携して、特定の産業でキラーアプリケーションを作るということが大事だ。さらに試験的なものだけでなく、実際に動くものを作らなければ、価値は伝わらない」と価値の重要性を強調した。

 IICのクロフォード氏は「一番大きな問題は許容されるかどうかだ」と述べる。「製造業でいえばOT(制御技術)のシステムがオープンになることは、ビジネス上の大きなリスクになり得る。これを説得できるような材料が必要になる。証明された成功の形を作り上げていく必要がある。IICでいえばテストベッドがこの役割を果たす」と述べている※)

※)関連記事:インダストリアルインターネットコンソーシアムが目指すもの

 オープンフォグコンソーシアムのフェダーズ氏も「信頼性を確保したモデルを作り上げていくことが重要だ」と述べる。標準化団体を中心に信頼性のあるIoTの環境を作り上げていくことの大切さを強調した。また「全ての判断をデジタルと同じように、0と1で行わないことが重要だ。社会的重要性がないものは公開し、重要なものは閉じるというようなその場に応じた判断が大切だと考える。最終的にはIoTを含めて作ったものの評価は市場が決める。人々がデータをどう考え、経済価値をどう捉えるかということが全てだ」とフェダーズ氏は述べている。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.