2つ目のAI技術は「人やモノのつながりを表すグラフデータから新たな知見を導く新技術『Deep Tensor』を開発」である。
冒頭で富士通研究所社長の佐々木氏が述べた通り、同社はグラフ構造データを用いたAI技術の開発に注力している。その背景には、ディープラーニングなどによる「知の獲得」と、それらを知識化する「知の構造化」、構造化した知から新たな知を創り出す「知の創出」というサイクルによって、社会受容性の高いAIを実現できるという考えがある。そして、グラフ構造データを用いたAI技術は、「知の構造化」で有力な技術とみられているのだ。
今回の成果は、「知の獲得」で有用なディープラーニングに、「知の構造化」で培ったグラフ構造データの知見を適用したものとなる。
これまで、ニューラルネットワークを用いたディープラーニングの事例としては、画像認識が最も多かった。これは、データ入力に固定数値である画素の座標番号を用いればよかったからだ。
しかしグラフ構造データは、ノード数が増えれば増えるほど対応する組み合わせ数が膨大になっていく。ノード数が10個なら362万通り、100個なら9×10157通りに達する。そこで、グラフ構造データにディープラーニングを適用する際には、専門家が設計したグラフ構造の部分的なパターンから特徴抽出を行い、そのビット列を用いていた。
今回の成果を用いれば、グラフ構造データを直接入力して、自動で特徴抽出を行えるようになる。つまり、グラフ構造データをそのままディープラーニングに適用できるわけだ。
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