日産自動車の本社5階に移動し、メディア試乗会の一環で商品企画プレゼンテーションを聞いた。説明は、ミニバンとしての使い勝手の向上が主体となった。プロパイロットについては、プレゼンの後半に設定や操作方法の説明を止め、「実際に使ってもらえば使い勝手の良さはすぐに分かってもらえる」と言わんばかりだった。
30分程のプレゼンの後、本社地下1階の配車施設に移動してハイウェイスターのプロパイロット エディションの試乗を開始した。与えられた時間は1時間20分だ。
通常、日産自動車の本社を起点とした試乗では、みなとみらい地区で一般道路の乗り味を試し、さらに首都高速の横羽線と湾岸線で高速走行をチェック、首都高速の大黒パーキングエリアで折り返すルートが設定される。
今回は試乗の目的をプロパイロットに絞り、高速道路での使い勝手の検証を重視するため、首都高速での試乗を中心にした。走行距離を伸ばすため羽田空港で折り返し、途中で大黒パーキングエリアに立ち寄った。
試乗の前半、みなとみらい料金所を通過して本線に合流してすぐに、プロパイロットを起動させてみた。ステアリングスポークの右側にあるプロパイロット専用スイッチを押し、その左側にあるSETボタンを押すと、ダッシュボード左側の7インチモニターでプロパイロットの表示灯がつく。そして先行車表示と車線表示がついた。
先行車と車線の両方を認識すると、セレナは車線のほぼ中央を維持しながら走行する。ちなみに、試乗後に分かったのだが、先行車追従のクルーズコントロールと車線認識は、それぞれ作動する条件が異なり、同時には設定されない。
こうしたプロパイロットの操作方法は、筆者が2016年1月に米国カリフォルニア州で試乗したTesla Motors(テスラ)「モデルS」のオートパイロットに似ている。なぜなら、セレナもモデルSも、イスラエルのベンチャー企業・Mobileye(モービルアイ)の画像認識技術「eyeQ3」を採用しているからだ。
ただし、走行中のステアリングの動きは、セレナの方が小刻みな修正が多い印象だ。その理由として、車外の情報を得るセンサーの違いが考えられる。モデルSの場合はフロントガラス中央上部の単眼カメラと、ラジエーターグリル部分にあるミリ波レーダーの双方を使うが、セレナでは単眼カメラのみを使用する。
単眼カメラの製造者について、テスラは「自社開発」として詳細は非公開だが、日産自動車の場合は米TRW製だと公開している。自動運転の特徴を出すため、直進安定性に関する「味付けの差」があっても不思議ではない。さらにいえば、車体やサスペンションによる直進安定性にも差があるため、クルマの動きを補正する操舵支援の度合いにも差が生じるのは当然だ。
この他、追従する前車との車間距離の調整はセレナでは3段階あるが、車間距離の設定を変えてから実際にクルマが動き出すまでの時間と、車間距離が安定するまでの時間は、おおむねモデルSと同じ印象だ。
また、合流地点での割り込み車の感知や、半径の小さいカーブで前車追従が解除されるタイミングなども、セレナとモデルSでは同じような印象だ。これは、両車の単眼カメラの視野角に大きな差がないからだといえる。
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