ゲームエンジンにCADモデルを読み込めたら、すぐにVR空間上でモデルを自由自在に手でつかんで動かしたり、互いに衝突させたり、衝突すると赤くハイライト表示して立体空間表示で干渉チェックが出来る! ……わけではありません。
ゲームエンジン内で物体を互いに衝突させたり、形状の通りにつかんだりするには、表示用ポリゴンよりずっと頂点数を少なくした衝突判定用ポリゴンが必要です。
人の手動操作なしの完全自動で、表示用ポリゴンから衝突判定用ポリゴンを作成するのは、CADデータのポリゴン軽量化よりもさらに難しく、未解決の課題です。筆者らが開発しているpronoDRでも、個々の部品をつかんで移動する機能はまだ実現できていません。
VRでは、床やテーブルに置かれているPCをつなぐケーブルが、動きまわるユーザーの邪魔になるという問題があります。よって、VR HMDをケーブルレス化するさまざまな解決法が模索されています。
解決法の1つは、「Microsoft HoloLens」(HoloLens)のように、HMDに3D映像を描画するPCを全て載せてしまうことです。
HoloLensは、高性能な空間トラッキング性能により、これまでのスマートフォンのカメラを使ったARでは避けられなかった3Dオブジェクトの位置揺れが全くないという特徴があり、製造業、メンテナンス用途での利用が非常に期待されています。
日本航空(JAL)も、HoloLensによる訓練のデモを公開するなど業務活用を模索しています。
しかし自動車のように、人間よりも大きい機械の3Dデータを近くで見ようとすると、途端に窓の中から空間を眺めているような狭さを感じてしまうでしょう。
光学シースルーARディスプレイの場合、物体に重ね合わせて文字などの情報を表示しようとすると、視野中心の解像度を高めなければなりません。また実際の風景を素通ししつつ、視野もゆがめない、広視野角の半透過ディスプレイが光学技術的に難易度が高いという事情もあって、現状のHoloLensは製造業VRディスプレイとしてベストとは言い切れません。それに、HoloLensに内蔵された小さなPC基板の3D描画性能はデスクトップPCには遠く及ばないため、大規模な製造ラインの3Dモデルを表示するには描画性能が足りません。
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