今村 三木さんにご紹介いただきまして、西村さんに(Omotenasyへ)入っていただきました。西村さんは西村拓紀デザイン株式会社で社長さん兼デザイナーをやっていて、もともとはパナソニックでさまざまな商品をデザインしてはさまざまな賞をもらっていた人です。エースデザイナーですね。ここまで来られたのは、この出会いが大きかったですね。
enmono 西村さんはモノの本質を見る力がすごいんです。
今村 そうですね。僕がガーってコンセプトをしゃべると、2週間後くらいにホイって出てくるという魔法のデザイナーです。
西村 もともとはOmotenasyの会社には入っていなくて、普通にデザインの依頼をいただいたんですね。で、しばらくやってる内に今村さんが「ちょっと話がある」ということで、「デザインはやっぱりとても重要です。クリエイティブの責任者として会社に加わってくれませんか?」というお話をいただいて、当時は今話していたコンセプトとか全然聞いてもいなかったんですけど……。
今村 多分会社名も知らなかったんじゃないかと。
西村 ちょっと面白そうというので、スッと入ってしまったんです。
今村 「いいよ〜」という感じで(笑)。
今村 もう1人、古川さんというエンジニアの人で、この人も「こういうの作りたい」っていうとポンと出してくれます。という3人でやっています。で、生みだされたのが「VIE SHAIR(ヴィー・シェア)」です。
enmono 「VIE」というのは?
今村 フランス語で「Life」です。「Feel the Life」にも通じるものをということで、「人生」ですね。
今村 人生をシェアするんですね。SHAIRの中に「AIR」が入っていますけど、これは何かというと(実際の製品を提示)、「世界初」(同社)のフルオープンエアヘッドフォンなんです。この耳の部分がバッと開いています。これ、このまま聞くとどうなるかというと、ヘッドフォンの音を聞きながら、外の音が完璧に聞こえます。
enmono 普通は密閉するじゃないですか。
今村 密閉すると、大体声が大きくなったり、話す時は大体こうなって(ヘッドフォンをずらすしぐさ)「え?」となったりする。でもこれならそのまま聞けます(話せます)。
enmono 音はもれないんですか?
今村 音はですね、ここの中に55mmの平板スピーカーがあります。指向性がすごく高いので音が一方向にしか届かない。つまり、あなたにしか聞こえません。
enmono なるほど!
今村 フルオープンでヘッドフォンの音を開いているにもかかわらず、周囲の人には聞こえない。ただし、音は耳の方向の真逆にも一直線上に飛ぶので、真横にいると若干シャカシャカします。こうすると(向かい合う)聞こえません。体験として説明するのはすごく難しいんですけど、装着感がなく、外でスピーカーの音を聞いているような音がします。
enmono おおー! これはそのまま会話できますね。音の粒度が細かい気がします。
今村 これも三木さんにご紹介いただいた平面スピーカー専門で作ってらっしゃる浜松のライト・イアの大和さんにご無理を散々言いまして、3回くらい作っていただきました(関連記事:大手メーカーを退職して、自分がメーカーになる)。
enmono ご紹介したのがいつくらいでしたっけ? 去年……いや今年。
今村 今年の春くらいです。浜松に行って。この半年間に3回作っていただきました。
enmono そこがすごいと思いますね。普通会っただけじゃ進まないんですけど。
今村 あ、そうなんですか?
enmono 「持ち帰って検討します」みたいなことが多いじゃないですか。でも知らないうちにそれを実装していて、さすがプロデュース能力が高いなぁと思いました。
今村 プロデュースするという立場にはあると思うんですけど、僕の役割は「リスク屋」です。何かを進めてお金を張りますとか、このプロジェクトを進めてリソース張りますということになった時に、それがコケる可能性や資金ショートする可能性があると思うんですけど、それをどうやってマネージしていくか。
今村 色んな方法があると思うんですね。もう1本走らせるという方法もあるし、ものすごいスピーディにやるという方法もあるし、あんまりお金をかけずにステップステップでやっていくという方法もある。その辺を見極めながらやっていく。日々リスクを取るためだけにいる。
enmono 本気モードだから話が進むんでしょうね。
今村 そうですね。そこは感じてもらっていると思います。だから一気にリスク取ります。
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