HDC01は、道路橋などの社会インフラ点検をターゲット市場に開発された。国内には約40万の道路橋が敷設されているが、それらのうち建設から50年以上が経過しているのは約20%。これらの老朽化した道路橋を全て建て替えることはできないので、老朽化の状態を点検して補修するなどして対応しなければならない。
しかし約10年後には既設の道路橋のうち約50%が建設から50年以上経過することになる。「人口減で労働力が不足する中、この規模を人手で点検するのは難しい。もちろん危険な場所での作業なので事故にもつながりかねない。HDC01であれば、その危険な作業を人に替わって行えると考えている」(加藤氏)という。
ただし、インフラの状態を点検するだけであれば、既に販売されているドローンにカメラを載せて撮影すればいいようにも思える。加藤氏は「インフラの状態を点検するには、点検したい箇所にある程度の距離まで近づく必要がある。しかし、固定ピッチのマルチコプターでは、自身に搭載しているローターによる気流の影響で、壁や天井に近づいたり、同じ場所に居続けたりすることが難しい。可変ピッチのHDC01であれば、壁や天井に近づいて、じっとしていられるので、点検したい箇所の映像を容易に撮影できる」と説明する。
社会インフラ点検用で実績を積んだ後には、災害時におけるインフラ調査/代替輸送用への展開も想定している。「D-COREによる姿勢制御と運動性により、雨の中でも風の中でも思った通りに動けるし、狙った位置に行けるので、インフラの状態確認やAEDなどの運搬にも使えるだろう。その場合、HDC01をよりパワーアップしたものになる」(加藤氏)。さらには、災害時だけでなく平時にも使えるインフラ情報ネットワークの一端を担えるという。「米国ではUAVが通るための通路となるUTM構想がある。今はUAVの数が少ないので問題ないが、UAVが普及した時、その通路内でUAV同士の衝突事故も起こり得る。姿勢制御と運動性に優れるD-COREはそこでも役立てる」(同氏)としている。
HDC01はあくまで開発機であり、2016年度前半までにHDC01の改良機を、同年度の後半には「HDC02」もしくはさらなる改良機を投入する予定だ。加藤氏は「国土交通省は2018年から、ロボットなどを用いた社会インフラ点検の本格運用を目指している。そこに間に合うように、2016年にモニター実験して、2017年に国の認可をとりたい」と述べている。
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